歯医者として長年やってきて、いまだに理解できないことが1つあります。それは、〝なぜ患者さんはデンタルフロスを利用したがらないのか〟ではなく、〝なぜ私は子どものころ、歯磨きが嫌いだったのか〟です。
私は子どものころ、朝に歯を磨くことにはまったく抵抗がありませんでしたが、なぜが夜に歯を磨くことが億劫で仕方がありませんでした。ある日、夕食後の歯磨き点検をする母に〝もう磨いたよ”と嘘をつきました。もちろん母はお見通しで「磨いてきなさい」と一言。翌日、母に「歯を磨いたの? 歯ブラシを持ってきなさい」と言われ、水で濡らした歯ブラシを持って行くと母は、「濡らしただけでしょ。ミントの歯磨き粉の匂いがまったくしないわよ」と、またもやお見通し。その次の日、歯ブラシに歯磨き粉をつけてから洗い流し、母の厳しい検査に持っていくと、今度は「口がまだ臭うわよ」と一言。やはり母にはお見通しです。私は何を思ってそこまで歯磨きを拒んでいたのでしょうか?
ある日、レストランのカウンターにおいてあるミント味の飴が歯磨き粉の匂いにそっくりなのを学んだ私は、毎晩母の歯磨き検査の前にミントの飴を口に入れて誤魔化すようになりました。今思い返すと、虫歯にならなかったのが不思議なくらいです。私は時間と頭を使ってどうしてそこまで歯磨きを拒んだのでしょうか? なぜ母の言うとおり素直に歯を磨かなかったのでしょうか? しかし残念ながら、今となってはあのころの私が何を考えていたのか理解することはできません。
読者の皆さん、歯科医の私もパーフェクトな患者ではありません。デンタルフロスが面倒だったり、歯科医院の椅子が怖いのは当たり前。私もフロスをすることを忘れますし、治療室の椅子に座ると神経過敏になることもあります。そして、歯磨きを億劫に感じるのも、経験者の一人としてよく理解できます。でも、知っておいていただきたいのは、私が悪い癖を直したように、皆さんの悪い癖も治すことが可能だということです。私は皆様を応援します! 一緒に歯の健康を保つ努力をしましょう!
Waterside Dental Care
Dr. クララ・リーClara Lee, DDS
ニューヨーク大学歯学部卒業。ニューヨーク大学ブルックデール病院でチーフレジデントを経て、13年以上にも及ぶ臨床経験は、一般歯科、コスメティック、インプラントを含む。インビザライン認定医。Waterside Dental Care医院長として古山医師と共に、多くの日本人患者を治療。Dentistryをこよなく愛している。
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