連載942 世界の街角から消えた日本人 いよいよ日本は本当に没落するのか? (上)

連載942 世界の街角から消えた日本人
いよいよ日本は本当に没落するのか? (上)

 この年末年始、私は3年ぶりに国外に出て、すでに3週間、北欧にいる。このメルマガも、まだ滞在中のフィンランド、ヘルシンキで書いている。
 久しぶりに国外に出て改めて思ったのは、日本のプレゼンス(存在感)のなさだ。どこの国の人間も「日本は素晴らしい国だ」と言う。先のサッカーW杯の予想を超えた健闘を、ヨーロッパの人間たちはみな褒める。しかし、それだけだ。
 なにしろ、日本発のニュースがまったくない。そのうえ、どこにも日本人観光客の姿がない。これは、ヨーロッパに限らず、アメリカ(ハワイ、グアムも含む)、オーストラリア、アジア各国など、世界中で起こっている。
 日本人観光客に出会わない街角を歩いて、本当にイヤな予感がする。このまま日本は、本当に没落していってしまうのだろうかと—–。

 

まったく見かけない日本人観光客

 先群が、ロサンゼルス港の湾外に釘付けになったニュースを見た人も多いと思う。
 現在、中国発の物流の最大の恩恵を受けているのは、欧州である。というのは、中国と欧州を結ぶ鉄道路線が貫通しているからだ。この路線を毎月2万両のコンテナ貨物列車が行き来している。
 中国側の主要起点は、浙江省の義烏(ウーイー)。ここには、義烏国際商貿城をはじめとした日用品の卸売市場が数多く集積し、日本の百均ショップの製品もここから運ばれてくる。
 この義烏とロンドン、マドリッドが、いまや鉄道路線で結ばれているのだ。

激化する先端半導体をめぐる米中戦争

 欧州全体では暖冬。とくに南欧では、たとえばスペイン南部のマラガでは気温が25度を超え、ビーチで泳ぐ人も出たという。フランスもイタリアも冬とは思えない暖かさというが、北欧はやはり寒い。本当に寒い。
 ヘルシンキは先週末、最高気温がマイナス10度を下回った。
 とはいえ、これはいつものことで、フィンランドの場合、サンタクロースとオーロラの国だから、年末年始になると世界中から観光客がやって来る。そのなかには、もちろん、日本人観光客も数多くいる。
 サンタクロースの故郷ロバニエミに向かう観光客は、ヘルシンキからVR(フィンランド国鉄)の夜行寝台特急「サンタクロースエクスプレス」で、北のラップランドを目指す。
 しかし、ここ数日、ヘルシンキ中央駅で日本人観光客を1人も見かけなかった。昨年暮れ、夜行ではないロバニエミ行きのVRのインターシティ特急に乗ったが、そのときも日本人は見かけなかった。日本人かと思った若いカップルは韓国人だった。
 ヘルシンキ市内でも、日本人観光客を見かけない。日本人観光客が行くのは、有名デパートの「ストックマン」、メインの公園通り「エスプラナード」、港の前の「マーケットスケア」、もっとも有名な観光スポット「ヘルシンキ大聖堂」、人気ブランド店の「マリメッコ」や「イッタラ」、人気のカフェの「アアルト」や「エクべり」など。しかし、どこに行っても日本人観光客を見かけなかった。

出入国規制が緩和されても効果なし

 日本人観光客が街角から消えたのは、ここヘルシンキばかりではない。ロンドンでもパリでもマドリッドでもそのようだ。私と同時期にスペインに行った家族とラインで連絡を取り合っているが、マドリッドでも日本人の姿を見ないと言う。英国の知人も同じことを言っていた。
 観光客はともかくとして、ひしひしと感じるのは日本のプレゼンス(存在感)のなさだ。なにしろ、年明けから日本発のニュースがまったくない。
 日本人だと告げると、こちらの人間は「日本は素晴らしい国だ」と言い、先のサッカーW杯の予想を超えた健闘を褒めてくる。しかし、それだけ。W杯などもうすっかり過去の話ではないだろうか。
 欧州ばかりか、アメリカ本土、ハワイ、グアム、オーストラリア、そして東南アジア各地でも、日本人観光客は消えてしまったという。
 昨年10月、コロナ禍による出入国規制が緩和されたとき、「これで海外旅行がどっと増える」「年末年始は海外で」と言われたが、蓋を開けてみるとそうはならなかった。
 今回の出国で必要とされたのは、3回以上の接種証明だけ。帰国時もファーストトラックの制度ができたので、もはやコロナ禍前より便利になった。なのに、人々は海外に出ない。いや、出られないのだ。


(つづく)

この続きは2月13日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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