研修生の命救うため、規約違反 地下鉄操縦士が解雇処分に

 ニューヨーク州都市交通局(MTA)は6日、訓練中に意識を失った研修生を救助するために規約に違反した地下鉄の操縦士を解雇した。
 1989年からMTAに勤務していたクインシー・カルホーンさん(60)は4月、地下鉄5番線に乗り操縦士研修生を訓練していたところ、ブロンクス区の終着駅近くで研修生が胸の痛みを訴え意識を失うという状況に直面した。カルホーンさんは通信センターへの交信を試みたが、ラジオの受信状態が悪く連絡が不可能だったため線路へ降りて信号機を停止させスイッチを操作し、時速10マイル(約16キロ)以下でダイアー・アベニュー駅に向かった。研修生は駆け付けた救急隊により、ジャコビ病院に搬送され手当てを受けた。
 MTAは、この行為は車両脱線を招く危険性があったとして、カルホーンさんを無給の停職処分としていた。これに対し、労働組合「TWUローカル100」の副組合長ケビン・ハリントン氏は、「同時多発テロが起きた時、人命を救うため私もカルホーンさんと同様に規約を破った。この決定は不公平だ」と激しく非難している。
 一方、解雇の判断を下した裁定人は、「カルホーンさんは適切な安全手続きに従わず、過去にも処分を受けている。彼は真実を語っておらず、医学的な緊急事態を裏付ける記録に深刻な矛盾がある」と主張している。