連載951 金融バブルの崩壊は近いのか?
「リスク資産」を捨て「実物資産」に切り替えるとき (中2)
コロナ禍でいったんバブルは弾けている
思い起こせば、金融バブルは、コロナ禍をきっかけにいったん崩壊している。
2020年3月16日、NYダウは、前営業日比で2997ドル安という過去最大の下げ幅を記録した。下落率はなんと、12.9%で、これは、1987年のブラックマンデーで記録した22.6%に次ぐ過去2番目の下げだった。NY株価は、3月に入ってから暴落を繰り返しており、この日は「総悲観」状態で、ついにサーキットブレーカーが発動された。
その後もNY株価は下落を続けた。3月23日に、景気対策法案の議会での審議停滞が悲観され、とうとう2万ドルを割り込んで1万8591ドルまで下落した。これは、2月12日につけたそれまでの過去最高値2万9551ドルから1万ドル以上の下げで、下落率も36%強だった。
もはや、株は投げ売り状態。完全なまでの暴落だった。
日本株も同じだ。コロナ禍が顕在化した2月後半から、日経平均は連日下げ続けた。そうして3月19日、一時的に1万6358円を記録した。そんななかで、決まったのが東京五輪の延期である。
ところが、NY株も日本株も、この後、大反転した。前記したように、コロナ禍が続くなかで、じわじわと上がり続けたのである。
なぜ、こんなことが起こったのだろうか?
バブル崩壊は次のバブルによって先送り
後に「コロナショック」と呼ばれた株価の暴落は、間違いなく金融バブルの崩壊である。世界的な金融緩和が続くなかで、余った資金が株などのリスク資産に向かい、バブルとなったのである。
株価の上昇はその現れだ。だから、膨れ上がった風船が爆発するように、やがて爆発するだろうと警戒されてきた。
金融バブル相場は、俗に「ゴルディロックス相場」(英国の童話に基づく表現で、日本では“適温相場”と称された)と言われ、コロナ禍前の2019年には、もう続かないだろうと有力なファンドマネージャーたちが警告していた。
したがって、コロナショックは単なる引き金であり、コロナ禍そのものが暴落を招いたのではない。つまり、2020年3月の株価暴落は、正確にはコロナショックではなかった。
バブル崩壊は次のバブルによって先送りされる。これが、20世紀後半から繰り返されてきたことで、今回もそれが起こった。コロナショック暴落は、その後のコロナ対策、すなわち、政府による救済策で先送りされた。
アメリカも日本も、いや、世界中で、政府は交付金という名の現金のバラマキを行なった。そのために、国債増発などで、紙幣がどんどん刷られた。
これで、株価は反転したのである。
(つづく)
この続きは3月2日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。