第66回 La Sirène(ラ・シレーヌ)

リラックスしてフレンチを

 ソーホーの6番街から一本脇道に入るとある、こぢんまりとしたレストラン「La Sirène(ラ・シレーヌ)」。ドアを開けると、天井には品のいいシャンデリアが。センスのいい木製テーブルとクラシックなビストロチェアに、やさしい光を灯したキャンドル。「フランスの家庭」をコンセプトにしたインテリアは、入った瞬間に心落ち着く温かみがある。
 このレストランのスタイルは「French Semi Gastronomy」、すなわち〝リラックスして食べられるフランス料理〟だ。伝統的なフランス家庭料理のレシピを元に、オーナーシェフの、ディディエ・パウリッキーさんが現代風にアレンジした料理が提供される。
 まずは前菜。「エスカルゴ(13・75ドル)」。フランス料理といえばエスカルゴだ。バターとガーリックのソースでローストされている。エスカルゴの身はもちろん、ニンニクの薫り高いソースをパンにつけて食べるのもまたおいしく、平らげた後は皿の上にはソース一滴と残らない。

同店を訪れる人の多くが注文するという「エスカルゴ」


 次にメインディッシュ。「ウサギ肉と平茸のシチュー(28・75ドル)」は、あっさりとしたなかに旨味が詰まった味だ。フランス料理ではよく使われる〝ウサギ〟。柔らかく煮込まれた淡白なウサギ肉はシチューという料理方法ととっても相性がよいということがわかる一品だ。

家庭的な味が魅力の「ウサギ肉と平茸のシチュー」


 最後にデザート。じつはパウリッキーさんはパティシエ(洋菓子職人)でもあり、デザートにも自信がある。そのパウリッキーさんおすすめなのが「フォンダンショコラ(12・75ドル)」だ。チョコレートケーキにスプーンを入れると、中から温かいチョコレートソースがたっぷり流れる。ダークチョコレートを使用しているため、甘すぎず、ほんのりとしたカカオの苦味が大人のデザートを演出する。添えられているココナッツシャーベットで温と冷の緩急が口の中で楽しめる。
 〝フランス料理〟というと、ちょっとハイソで行くのに気が引ける…と思いがちだが、そんな先入観は全て吹き飛んでしまう同店。従業員も全員フランクで、友達や家族と会話をはずませながらリラックスして食事を楽しめる。平日でも午後7時過ぎから一気に混みだし、8時には満席で、店内はワイワイと人々の楽しそうな会話が飛び交う。
 日本の某大手航空会社のスタッフも、ニューヨークに来るたびに訪れるという隠れた人気店。普段使いのフレンチとして、利用してみてはいかがだろうか。

La Sirène
558 Broome St(bet 6th Ave & Varick St)
212-925-3061
www.lasirenenyc.com
月~木: 5pm~10pm
金~土: 12pm~11:30pm
日: 12pm~10:30pm
BYOB