連載971 最有力候補ディサンティスと次期大統領選 (3) もう始まっている選挙レース、勝ち抜くのは誰か? (上)
(この記事の初出は2023年2月22日) 昨日に続いて、共和党の最有力候補と目されるフロリダ州知事ロン・ディサンティス(Ronald Dion DeSantis、44歳)を中心に、2024年に誰が次期アメリカ大統領になるのかを展望してみる。予備選挙が始まるのは来年なので、「気が早すぎる」と言われるかもしれない。 しかし、今回は、トランプ前大統領がすでに出馬宣言をしてしまっただけに、もう選挙戦に突入したかのようなムードになっている。 しかも、来年の予備選挙は、例年と大きく様変わりする。
トランプもバイデンも「出る!」と出馬宣言
アメリカ大統領選挙は、4年に1度行われ、投票日は、「11月の第1月曜日の翌日の火曜日」と決まっている。2024年は11月5日である。
とすると、そこまでまだ2年弱あるわけで、その間、なにが起こるかわからない。つまり、「気が早すぎる」というのが、一般の人間の正直な感想だ。とくに、日本においては、ほとんどの人が無関心である。
ところが昨年暮れ、早々とトランプ前大統領が「出る!」と宣言し、今年になってバイデン現大統領も「出る!」と言ったため、アメリカではもう選挙戦に突入したかのようなムードになっている。
ただし、トランプは現在76歳で大統領に返り咲くと78歳、バイデンは現在80歳で大統領選に再選されると82歳。あまりの「高齢対決」にイマイチ盛り上がっていない。
が、こういうときこそ、新しいスターが誕生する。その最有力候補が44歳と若いフロリダ州知事のロン・ディサンティス(Ronald Dion DeSantis)だ。
それではここから、私のメルマガの読者のみなさんには周知のことだろうが、アメリカ大統領選挙の仕組みとスケジュールを確認しながら、話を進めていきたい。
「勝者総取り」で州の選挙人を全部獲得
アメリカ大統領選挙の有権者は、事前に登録した18歳以上のアメリカ国民である。
投票は州ごとに行われ、それぞれの州で勝者を決める。勝者は「勝者総取り」(Winner-take-all)のルールに従い、その州に人口比などを基にして割り当てられた「選挙人」(elector)を獲得する。
たとえば、フロリダ州で勝者となった候補は、フロリダ州に割り当てられた選挙人29人すべてを獲得する。フロリダ州の選挙人29人は、最大のカリフォルニア州の55人、続くテキサス州の38人に次いで、ニューヨーク州と並んで第3位の規模である。これは、ディサンティスにとってはかなりのアドバンテージとなる。
彼が、最有力候補として注目されるのは、フロリダで間違いなく勝てると思われているからだ。
ただし、まだ出馬宣言をしたわけではなく、したとしても、共和党内でトランプらと争い、指名を獲得しなければならない。そうして共和党の大統領候補となったら、本選挙で民主党の大統領候補と戦い、州を一つずつ取っていくことになる。
アメリカ50州の選挙人の総数は538人。過半数は270人である。よって、獲得した州の選挙人の数の合計が、270人を上回れば当選となる。
指名争いから11月の本選挙までの道のり
続いては、今後のスケジュールだが、いまはまだ様子見段階で、トランプ、バイデンが早々と出馬宣言したとはいえ、両党とも候補が出揃うのは夏前になる。
共和党では、ニッキー・ヘイリーが2月15日に出馬宣言したが、この先、候補と目される議員が何人立候補するかはわからない。また、確実視されているディサンティスの出馬宣言がいつになるかわかもわからない。しかし、5月末、遅くとも6月頭までに候補者が出揃うのは間違いない。
民主、共和両党の候補者が出揃うと、選挙戦は、両党内でのデイベートやテレビ討論会に移行する。こうして、秋から冬にかけて党内での争いが続く。候補者のスキャンダルが出たり、あまりの人気のなさに脱落者が出たりする。
こうして年が明けて2月になると、いよいよ両党とも候補者を1本化するために、「予備選挙」(primary)と「党員集会」(caucus)が行われる。この指名争いは全米各州で行われ、ここから本格的な大統領選挙がスタートする。選挙戦が進んでいくにつれ、メディア報道も国民の熱気も日を追うごとにヒートアップする。
とくに、3月の「スーパーチューズデー」では、14の州で予備選挙と党員集会が同時に行われるので、ヒートアップは頂点に達する。毎回、いろいろなことが起こるが、予備選挙と党員集会が終わった時点で、両党とも全国党員大会を開き、ここで正副大統領候補が決定する。
アメリカ大統領選挙の最大の見せ場は、「レイバーデイ」(9月の第1月曜日)」の後に行われるテレビ討論会だろう。全国に生中継される両党の大統領候補同士によるテレビ討論会は、投票行動に大きく影響する。このテレビ討論会は慣例により計3回行われ、そのうちの1回は、外交・安全保障問題がテーマになる。
こうして、2024年11月5日になり、全米で投票が行われて次期大統領が決定する。
しかし、今回は、指名争いレースが例年とは様変わりしている。これまでは、1月から2月にかけて行われる最初の予備選挙はアイオワ州と決まっていた、それを、民主党が52年ぶりに変更してしまったからだ。
(つづく)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。