Dr.クララ・リー Dr.リーのデンタル日記 毎月第1月曜日掲載 Vol.44 アスリートの歯は なくなっていく?

 私の親戚には、周りの誰しもが羨むような人がいます。それは、トライアスロン選手である、いとこのビルです。水泳、自転車ロードレース、長距離走の3種目を競う過酷なレースに参加するために、彼は多くの時間を専門的なトレーニングに費やしています。
 ある日私は、ビルを応援するためにレースを見に行きました。最後の種目である長距離走では息があがり、大量の汗を流し、痛みで足を引きずるようにしながら、それでも前進している選手たちをたくさん見ました。
 しばらくすると、ビルが私の前にやって来ました。なんと、彼は微笑んでいて、もう一人の選手と話をしているではありませんか。そして2人とも、体力を全く使うことなく、足どりも地面にほとんど触れていないかのように走っているのです。本当にすごい! Go Bill !
 最近の歯科学会で、1週間のうち最低10時間のトレーニングを受けたトライアスロン選手35人の歯を調べた結果、より激しいトレーニングを受けたときほど唾液の酸性度が高くなり、歯を侵食するということがわかりました。
 また、アスリートたちがよりよいパフォーマンスをするために、運動前後や最中に摂取するスポーツ飲物やプロテインバーは、砂糖や炭水化物をたくさん含んでおり、それらが運動で酸性になった唾液の侵食力をより強くする原因になります。アスリートがトレーニングをしていると、唾液の量も減少します。実際に、「ランナーの口」と呼ばれる状態があります。これは口内が虫歯に最適な状況だという意味です。虫歯菌は、砂糖と炭水化物を使って酸を生成し、歯を溶かします。唾液にはその酸を中和したり、溶かされた歯を再生させる力があるのですが、口内に十分な唾液がないということは、これらの働きができず、虫歯予防が難しくなります。
 では、どうすれば良いのか? 運動は控えるべきか? トライアスロンなんてもってのほか? そうだとしたら、いとこのビルは「NO WAY!」と叫ぶでしょう!
 シンプルな解決策は、口内を常に潤すことです。運動の前、最中、そして後には水を飲んでください。一部の長距離走選手らは、水分と体内水分を保持するために、同時に塩分も摂取し、バランスを保つようにしているといいます。また、これから運動をはじめようと思っている人や、トレーニング内容を変えようと思っている人は、事前に掛かりつけの医者に確かめてください。
 次回ビルに会うとき、私は慎重に彼の笑顔をチェックしようと思います。やっぱり、健康な歯と体でいることはすばらしいことです! 


Waterside Dental Care

Dr. クララ・リーClara Lee, DDS

ニューヨーク大学歯学部卒業。ニューヨーク大学ブルックデール病院でチーフレジデントを経て、13年以上にも及ぶ臨床経験は、一般歯科、コスメティック、インプラントを含む。インビザライン認定医。Waterside Dental Care医院長として古山医師と共に、多くの日本人患者を治療。Dentistryをこよなく愛している。
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