雇用法で守られる権利について
連邦法、およびニューヨーク州と市の法律により、「Protected Class(保護されるべき階層)」が定められ、その階層に対する差別は不当なものとなっています。ただし、さまざまなカテゴリーの中には誰でもひとつは当てはまるものがあり、そういった意味では全員が何らかの保護されるべき階層にいると言えます。今回からは、その詳細についてご説明します。
①人種と肌の色
EEOC(Equal Employment Opportunity Commission)によると、報復措置に続いて、一番訴えの多いカテゴリーになります。連邦法とニューヨーク州と市法により、仕事に必要なスキルではなく人種や肌の色(肌の色が濃い・薄い)に基づいて採用、解雇、昇格、給与またはベネフィットなどを決定することは違法となっています。また人種や肌の色を理由に従業員をハラスメントを行うことも違法です。連邦法は従業員15人以上の職場にのみ適用されますが、ニューヨーク州法と市法では、従業員数4人以上の職場が対象になります。
②国籍・民族(ethnicity)
人種や肌の色同様(法律が適用される従業員数も一緒)、従業員あるいは仕事の応募者に対して、その人の国籍や民族性で採用面、また従業員の仕事に関する決定をするのは違法となっています。そのため、面接官は応募者に「どの国の出身ですか?」と聞くべきではなく、ある国の言語に堪能な人材を求めているのであれば「~語は話せますか?」とスキルについての質問をすべきです。またアクセントに関してはそこだけ注目するのは違法になり、あくまでもその人材のコミュニケーションスキルを評価するべきとされています。
③性別
性によって採用や仕事の面での事項を決定するのは禁止されており、女性だけでなく男性も対象となります。法律の適用される従業員数は上記と同様です。例としては、仕事の面接時に女性だけに既婚か未婚か(注:婚姻による差別も違法)あるいは子どもの有無を質問したり、女性は残業ができないという想定の下、一定の職務には男性のみを配置するなどがあります。残業に対する懸念があるのであれば、面接官は「この仕事には週に~時間くらい残業が発生しますが、それは可能ですか」と質問すべきで、応募者の家庭について聞くべきはありません。
④年齢
連邦法では40歳以上が対象になり、従業員数20名以上の職場に適用されます。ニューヨーク州と市の法律では18歳以上全てが対象になります(従業員数4名以上の職場)。米国では定年制はほとんどなく、適用となるのはパイロット、航空管制官、警察官、消防官などの職務に限られます。面接時に「この年齢では体力が心配だから採用しない」、また一定年齢以上をレイオフするなどは違法になり、年齢ではなく基準は個人の能力とすべきです。
⑤性的指向
こちらは連邦法ではなく、ニューヨーク州と市の法律の適用となります。応募者や従業員がゲイかそうでないかで採用や仕事に関する決定をするのが違法になるばかりでなく、ニューヨーク市の法律では性転換をした人、または性同一障害を持つ人も保護される階層とみなされ、それを基に雇用に関する差別を行うことは違法となっています。
今月のお店
Café Integral
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飯島真由美 弁護士事務所
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NY州認定弁護士。法政大学文学部、NY市立大学ロースクール卒業。みずほ銀行コンプライアンス部門を経て独立。2010年に飯島真由美弁護士事務所を設立。家庭法、訴訟法、移民法など幅広い分野で活躍中。趣味はカフェ巡り。