雇用法で守られる権利について
連邦法およびニューヨーク州と市の法律により、「Protected Class」(保護されるべき階層)が定められ、その階層に対する雇用上の差別は不当なものとなっています。前回はその中の5つのカテゴリーについてご説明しましたが、今回はその他のカテゴリーを一部ご紹介いたします。
⑥障がい
1990年に施行されたAmericans with Disabilities Act(通常ADAと呼ばれる連邦法)及びニューヨーク州と市の法律により、仕事に必要なスキルではなく、障がいによって採用や解雇、昇格やベネフィットに関する決定するのは違法となっており、また雇用者は従業員の障がいに対してReasonable Accommodation(合理的配慮)をするように定められています。その例としては、机やオフィス機器を従業員に使いやすいように調整する、勤務時間を混雑時を避けるために変更するなどです。ただし従業員に対する配慮が雇用者の状況によってUndue Hardship(不当な負担)になる場合はその限りではありません。
⑦宗教
宗教についても連邦法とニューヨーク州と市の法律により、採用を含む仕事に関する決定をそれに基づいて行うのは違法となっています。最近の事例としては、アパレルチェーンのAbercrombie and Fitchが会社の「見た目のポリシー」に反するとして、頭にスカーフを巻いたイスラム教の応募者を採用しなかったのは違法とした、最高裁の決定があります(2015年)。また雇用者は障がいを持つ従業員同様、例えば従業員が宗教による祝日を休めるように、雇用者の不当な負担とならない範囲で配慮することとなっています。ただし、雇用者は特定の宗教を配慮することにより、他の従業員に重大な負担を掛けることは避けるべきです。
⑧妊娠
妊娠した女性に対する雇用差別は連邦法で禁止されており、州の法律でも妊娠による差別は違法で合理的な配慮をすべしとなっていますが、その基準については曖昧なままでした。しかし、ニューヨーク市で2014年に修正された人権法により、妊娠している、あるいは出産した女性が仕事を行うために必要な、合理的な配慮を雇用者に要求することが法的に可能になりました。配慮の要求例としては、頻繁に休憩を取ることを認めること、重労働についている場合は軽作業の業務への異動を認めること、また母乳を搾乳できる清潔な場所の提供を要求することなどです。市の法律は、従業員が4人以上の職場に適用されます。
⑨遺伝情報
日本人にはなじみの少ない法律と思いますが、2009年施行の連邦法と州法により、個人の遺伝情報による雇用差別が禁止となりました。遺伝情報の例としては従業員やその家族の病歴があたります。この法律ができた背景としては、個人の遺伝情報は現在の仕事を遂行する能力とは直接関係がないにも関わらず、雇用差別があったためです。なお雇用者は医療記録と同様に、従業員の遺伝情報を取得することは一部の例外を除いて禁止されています。
今月のお店
Cafemarie
●120 MacDougal Street (Bleecker & West 3rd)
ニューオリンズ風のドーナツとカフェオレの店。他にオムレツなども。
飯島真由美 弁護士事務所
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NY州認定弁護士。法政大学文学部、NY市立大学ロースクール卒業。みずほ銀行コンプライアンス部門を経て独立。2010年に飯島真由美弁護士事務所を設立。家庭法、訴訟法、移民法など幅広い分野で活躍中。趣味はカフェ巡り。