Dr.クララ・リー Dr.リーのデンタル日記 毎月第1月曜日掲載 Vol.46 どこまでいけば “やばい”?

 先日、感謝祭の休日を家族と過ごすべく帰省した大学生の患者さんが当院を訪れた時のこと。あまりにも分厚い歯垢の層に驚かされ、何があったのか尋ねました。すると彼は生まれてから1度もむし歯になったことがないと言い、さらに「毎日歯を磨かなかったからって、そんなに悪くはならないでしょ?」との返答。そこで、どれくらい歯を磨いていないのか聞いてみると、「忙しい時は、2、3日くらい磨かないかな。」とさりげない返事でした。2、3日?何それ?と私は思わず椅子から転げ落ちそうになりました。
 米国歯科医師会のウェブサイトによれば、しっかり歯磨きをしている米国人は人口のわずか30%だけで、2日以上歯みがきしないことがあるという大人が23%もいるといいます。特に若い男性に見られる傾向のようなのですが、実際に目の当たりにしたのはこの時が初めて。絶句しました。
 彼にすれば、「大したことないじゃん? ちょっと息が臭くなるかもしれないけど、歯磨きをすれば直ることでしょう?」という感覚ですが、とんでもない! そんな簡単なことじゃ済まされないのです! 歯を磨かないと、食後24時間以内には、バイ菌を含んだ歯垢が歯の表面に付着し、2日目には歯垢が厚さを増し、バイ菌も食べかすも増加します。当然口臭も悪化。1週間もすれば、吐く息はもはや悪臭、分厚い歯垢だけでなく、歯茎も腫れて出血しやすくなるのです。さらに歯磨きをしないでいると、エナメル質が破損し、むし歯や歯茎の骨の損失にまで至ります。
 患者用の椅子を起こし、拡大鏡を手渡して自分の前歯を見るよう促し、ライトを当てました。そして彼の前歯にたっぷり溜まった歯垢に、治療用具で「Lee」と私の名を彫って見せたのです。そして唖然としている彼に歯ブラシと歯磨き粉を手渡して、洗面所に行かせました。その結果、歯磨きで溜まった歯垢は全て取れ、幸いにも今回は最悪の事態にならずに済みました。でも次はむし歯や、歯茎や骨の損傷につながらないとはいえません。口腔内の本当の“やばい”状態の定義は難しいのですが、歯垢に名前が書けるまでになると、かなり“やばい”と言えるのではないかと思います。


Waterside Dental Care

Dr. クララ・リーClara Lee, DDS

ニューヨーク大学歯学部卒業。ニューヨーク大学ブルックデール病院でチーフレジデントを経て、13年以上にも及ぶ臨床経験は、一般歯科、コスメティック、インプラントを含む。インビザライン認定医。Waterside Dental Care医院長として古山医師と共に、多くの日本人患者を治療。Dentistryをこよなく愛している。
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