凶行撮影の村議、自問する日々

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共同通信
街頭演説に臨む安倍元首相と、背後に立つ山上徹也被告(右から2人目)=2022年7月8日、奈良市(大谷敏治さん提供)

 昨年7月、安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した事件の現場に居合わせた奈良県山添村議の大谷敏治さん(47)は、凶行の前後を小型ビデオカメラに収めていた。鮮明に記録された2発の銃声、飛び交う怒号。事件から8日で1年となるが、歴史的な事件を「後世に伝える記録を残せた」と思う半面、あの場に自分がいた意味を自問し続ける日々が続く。

 選挙掲示板を作る塗装業の父の姿を見て育った大谷さんにとって、幼い頃から政治は身近だった。小泉純一郎元首相の力強い演説を見たのがきっかけで、「政治家の追っかけ」を始めたのは約20年前。大物政治家が関西を訪れた時には選挙演説を撮影、家族で振り返るのが楽しみとなっていた。

 大谷さんは演台から10m離れた歩道に立ち、レンズを安倍氏に向けた。発生前後の約30分間をまとめた映像は、午前11時過ぎから始まる。心臓マッサージを続ける陣営スタッフ、泣き叫ぶ候補者。発生直後のどよめきや悲鳴まで生々しく収録されていた。

 映像はその後、テレビなどで繰り返し流され、事件を伝える貴重な記録となった。