連載1040 NYも東京も株価上昇が止まらない。 しかし、もうパーティを切り上げるときでは? (上)

連載1040 NYも東京も株価上昇が止まらない。
しかし、もうパーティを切り上げるときでは? (上)

(この記事の初出は2023年6月20日)

 これまでの経済常識から言うと、現在の株価上昇は考えられない。たとえばアメリカはインフレで、FRBは毎月のように金利を引き上げてきた。日本もインフレなのに金融緩和を続行し、経済低迷から円安が進む一方になっている。これで、NY株も、日経平均も、上がり続けているのだから、経済学のテキストはみな間違っていることになる。
 私は投資家ではないうえ、単なる経済ウオッチャーに過ぎないので、ポジショントークなどする必要がない。それでも、なにか嫌な予感がする。もうそろそろ、パーティは終わりにして、「お先に—-」と、引き上げたほうがいいのではないだろうか?

 

金利が上がっても下がらないNY株価

 NYダウは6月16日、それまで続いてきた上げが一服して、前日比108ドル安の3万4299ドルで取引を終えた。
 2021年から新たに連邦の祝日となった「Juneteenth」(ジューンティーンス)が6月19日のため、土日月の3連休。それを控えての調整売りで終わったと言える。
 ちなみに、ジューンティーンスは、ジューン(6月)とナインティーンス(19日)を繋げたもの。この日は、1865年にテキサス州で発令された奴隷解放宣言の日。リンカーン大統領が1862年に奴隷解放宣言に署名してから3年後、初めて奴隷解放が実現した日という。
 3連休前の一服感があったとはいえ、これまでNYダウは、昨年9月に付けた安値から約20%も上昇した。ナスダックも、昨年3月以来の高値水準をクリアした。この間、FRBはFOMC(連邦公開市場委員会)において、10回連続で利上げしてきているのに、株価上昇のパーティは終わる様子がないのだ。
 どんな経済学のテキストにも、「金利上昇は株価を引き下げる」と書いてあるが、そうはならなかった。先週の上昇に関しては、議会の債務上限問題が解決したこと、今回のFOMCでFRBが利上げを見送ったことがあるとされるが、景気の動向は変わっていない。
 アメリカの消費者物価指数は11カ月連続で前年同月を上回っており、インフレは続いている。企業実績も、目立ったものはない。株価上昇を牽引したのは、半導体のエヌビディアやEVのテスラなどの大型株というが、エヌビディアにいたってはバイデン政権の対中輸出規制により最大市場の中国を失うというのに上がり続けてきた。

日経平均の上げは外国人買いがもたらした

 NY株価とともに上昇を続けてきたのが、日経平均だ。連日、バブル後の最高値を更新した。そうして、週末の16日には3万3772円まで上がったが、週明けの19日には、前日比335円安の3万3370円と下げた。
 とはいえ、今年の1月の日経平均の月間平均値は2万7327円 だったから、半年で約6000円も上がったことになる。
 コロナ禍が終わって、世界各国の経済は回復した。しかし、日本経済は相変わらず低迷を続け、IMFなどの予測によると、今年度の成長率は1%以下で先進国中最低だ。企業業績も、円安の恩恵を受ける企業以外は芳しくない。
 それなのに、株価が上がるのは、金利差と円安を背景にして、外国人投資家が買い続けているからだ。
 たとえば、公表されている6月第1週(6月5日~9日)の売買状況を見ると、外国人投資家のほぼ一手買い(国内事業法人の656億円を含む)で、個人の売り越し額は4819億円にも達し、国内勢は全面的に売っているだけだ。
 先週までで外国人の日本株買いは11週連続となり、日本人はオール売りである。証券アナリストに言わせると、株価上昇にもっとも影響したのは、あのウォーレン・バフェットが日本株への投資を明言したことだという。
 日本人もそうだが、外国人にとってもバフェットは「神様」なのだろう。


(つづく)

この続きは7月13日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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