今年もコモンコアテストの季節がやって来た。毎年4月、公立学校の3年生から8年生に実施される、ELA (国語)とMATH(数学)の学力テスト。結果が出るのは夏休みなので、6月末に出る生徒のグレードリポート(通知表)に影響はない。しかしニューヨーク市では4年生と7年生のテスト結果が、その後の進学に影響するため、競走率の高い学校を目指す生徒や保護者に、入試の一部のような緊張感を強いる場合もある。今回はそのコモンコアテストの概要と家庭でできる対応策を紹介する。
コモンコアテストとは?
コモンコア・スタンダードは 2010年6月に発表され、2010〜11年の学年期より段階的に導入された学習新基準。日本の学習指導要領にあたる。それまで各州が独自に定めていた基準を、 初めて州間で統一することで、各州の学力格差を埋め、かつ21世紀の若者に必要とされる知識や技術を学ぶ力を付けることを目的に作られた 。
読解力と理論的な思考、書く力を重視するコモンコアに沿い、ニューヨーク州ではテスト内容の水準を引き上げ、13年に初のコモンコアテストを実施、今年が3回目のテストとなる。
テストスコアと中学進学
ニューヨーク市の公立中学では、 選抜方式を採用する学校やプログラムで、4年生のテストスコアが大きなウエイトを占めていた。しかし本年度よりニューヨーク州が、テストスコアを選抜基準の「唯一(solo)、第一(primarily)、もしくは主な要因(major factor)」として使用することを禁止、多項目の総合点(composite score)が使われるようになった。
対象となる項目(rubric)は、4年生の成績、テストスコア、出席日数、遅刻回数、学校独自の試験や面接など
多岐にわたり、例えばELAとMATHのテスト
スコア各22・5%、グレードリポーの45%、出席率10%を加算して総合点を出すという方法だ。項目と各評価のパーセンテージの設定は各校に一任されるが、テストスコアを50%以上の比率で選抜に考慮することはできなくなった。
これにより中学進学におけるテストスコア偏重は軽減したが、倍率の高い人気校を目指す家庭にとり、4年生のテストスコアが大きな意味をもつ現実が改善されたかは疑問だ。
テスト拒否
コモンコアへの批判は発表当時からあり、それに伴いテスト拒否(opt out)の運動が学校や保護者主導で起こっている。テストスコアを選抜の考慮に入れないと宣言する中学も出てきている。学校
やPTAからテスト拒否を勧められても、最終的には個人判断だ。テスト拒否による罰則もない。
また、中学入学の一年前のスコアは、それ以後の生徒の成長を反映していないとの理由で、選抜の考慮にいれない中学もある。
コモンコアテストの実際
テストはELAとMATH、各3部に分かれたテストを、3日間連続、計6日間にわたって行なわれる。テスト時間は学年で異なり、一回60分から90分で、残りは通常授業となる。結果は3桁のスケールスコア(全問正解で450)で出され、1から4の四段階評価に分けられ、
3以上が合格(pass)とされる。
ELAはフィクション、ノ
ンフィクション各分野の長文読解をもとにした、選択問題(multiple choice)文章解答(short response) エッセイ(extended response)、
MATHは選択問題と、解答を導いた方法の記述
(extended response)で構成される。 長文読解では3日間で10 以上の文章を読んで答えるスタミナ、エッセイは途中で時間切れにならないよう、時間配分も大事になる。
海外からの転入生の場合、ELAの免除や、通訳つきでの受験も可能だ。
日本人家庭でできるサポート
(1)コモンコアを知る
日本人家庭には、馴染みの薄い形式のテスト。学校でコモンコア関連の説明会がある場合はなるべく出席しよう。各地教育局サイトのコモンコアのページも参考になる。(表1)
(2)過去問から学ぶ
ニューヨーク州コモンコア
サイトEngage NYでは過去問の抜粋と採点基準の解説が掲載されている。 出題される文章の傾向も知ることができ、便利だ。(写真1・2)
(3)子どもの宿題に目を通す
アメリカでは、保護者の介入の度合いが、子どもの学業を左右するといっても過言ではない。日頃から子どもの宿題に目を通すことで、授業内容、指導法、解答法を把握でき、 子どもと同じ目線からのアドバイスに役立つ。
(4)学校のテスト対策を把握
学校により、テスト対策の授業をするしない、早朝、放課後、土曜日にテスト準備の補習クラスをする、遅れている生徒のみに補習を行うなど対応は様々だ。何か疑問があれば、 担任に相談するなど積極的にコミュニケーションをとろう。
(5)テストプレップ(準備)について
学校で学ぶ範囲内での出題なので、先取り学習は必要ない。3年生は、生徒の実力や弱点を見極める練習の位置づけなので、「スコアを上げるためだけ」のテストプレップは、本来の力を見逃す可能性もある。4年生以降はELAも難易度が増すので、親子で苦しみ、喧嘩になるよりは、専門家に託すのも有効だ。コモンコアや、日本人の弱点に熟知した教師を探すなど、家庭の状況にあったサポートを得ることが大事だ。
(6)語彙を増やす機会を作る
日頃から色々な英文に触れ、英語の語彙を増やす。本読みが苦手な子には、新聞でも雑誌でも、親が率先して毎日「楽しんで読んでいる」姿を見せることも役立つといわれる。
テスト前日、各学校が生徒に出す宿題はほぼ同じ。「外遊びをして良く寝ること」だ。(文=河原その子)
イメージ1)
表1:各州教育局コモンコアテストサイト
コモンコア・ステートスタンダード・イニシアティブ www.corestandards.org
Engage NY(NY州コモンコア説明) www.engageny.org/common-core-curriculum-assessments
NY市教育局コモンコアライブラリー http://schools.nyc.gov/Academics/CommonCoreLibrary
NJ州教育局コモンコアページ www.state.nj.us/education/sca
CT州教育局コモンコアページ www.sde.ct.gov/sde/cwp/view.asp?a=2618&q=322592
2014年NY州テストサンプル問題と解説 www.engageny.org/resource/new-york-state-common-core-sample-questions