創刊20周年特別企画
日本人コミュニティを彩る人々
ニューヨークの日本コミュニティは、歴史的に日本人・日系人を支援しようとするはかり知れない苦節や活動から、今日の平和な生活を手にした。それを維持するために今も働き続ける人々にスポットライトをあててみた。
ニューヨーク日系人会(JAA)
会長
佐藤貢司
佐藤貢司
オリヱント化学工業の北米法人、オリヱント・コーポレーション・オブ・アメリカのシニア・バイス・プレジデント兼ゼネラル・カウンシル。ニューヨーク州、コネティカット州、ニュージャージー州弁護士。米日カウンシルのカウンシル・リーダー、ニューヨーク・ウェストチェスターのアジア系アメリカ人アドバイザリー・ボードメンバー、ロサンゼルスの全米日系人博物館(JAMN)の理事でもある。
(JAA)
ホームページはこちら
https://jaany.org/ja/home-jp/
日系人祖先の尽力忘れたくない
ボランティア精神でNYに根付く
―生粋のニューヨーカーですね。
佐藤「両親は日本から来ましたが、私はマンハッタンで生まれました。ウェストチェスターで育ち、土曜日は補習校に行きました。他の子みたいに遊びたい、漫画見たいと思いましたが、後に東京の法律事務所で働き始めたので、補習校に行って良かったと思っています。父、佐藤登は、1960年代〜90年代までAZUMAという小売店を7つ経営していました。89、90年にはJAA会長も務め、私も2022年から会長に就任しました。親子2代で会長というのは、JAAでは初めてのことです」
―JAAは「助け合って100年」を合言葉にした米国政府、ニューヨーク州、ニューヨーク市公認の非営利団体(NPO)ですね。アメリカで初の日本人開業医・高見豊彦博士が1907年、「日本人墓地の購入と日本人の相互扶助」のために設立した「日本人共済会」が前身です。現在、JAAのフォーカスはどのようなものでしょうか。
「JAAで最も大切なのは、ボランティア精神です。東日本大震災の際、コミュニティーからたくさんの支援をもらったので、毎年3月11日と、同時多発テロがあった9月11日をボランティアの日としています。2014年から在ニューヨーク日本国総領事館などと連携し、ハーレムのフードバンクなどでホームレスの人の食事の準備や配膳のお手伝いをしています」
「また、新型コロナウイルスによるパンデミックの間は、『プロジェクト弁当』として、170人以上の高齢者に週2回、お弁当を無料で配達していました。電話バンクも作って、高齢者の安否を確認するため、会員が定期的に電話をかけていました。また、日常的にあるJAAの行事の準備や配膳など、会長である私も含めて全員がボランティアでJAAを運営しています」
―会長としてのメッセージは。
「私たち日系人や日本人が現在、困難もなくニューヨークに住んでいられるのは、祖先のみなさんが大変な苦労をされたからです。第2次世界大戦が始まって、戦中はアメリカ生まれでも強制収容所に入れられました。戦後ですら日本人は、アメリカの敵とみられていたのです。名誉理事のスキ寺田ポーツさんは、アジア系社会で重要な人物ですが、ニューヨークに住んでいた彼女の家族は戦時中、米連邦捜査局(FBI)に監視されていたのです。JAAとして、祖先の方たちの尽力を忘れたくない、感謝し続けたいと思います。その気持ちを次の世代にも継いでもらう準備をしていきたいです」
―毎月の敬老会もいつも盛況です。桜祭や七夕、フリーマーケット、外務大臣杯軟式野球大会など昔からの行事以外に、新しい試みもありますね。
「8月25日にニューヨーク・メッツと千賀滉大投手が、ロサンゼルス・エンゼルスと大谷翔平選手をホストします。この日を『ジャパニーズ・ヘリテージ・ナイト』として、JAAとニューヨーク日本商工会議所(JCCI NY)、ジャパン・ソサエティー、米日カウンシル、在ニューヨーク日本国総領事館、全米日系人博物館(JAMN)の6団体が初めて連携しました。ゲームの前に、太鼓の演奏や盆踊りなどがあり、この日のためのビデオも大画面に映されます。桜の柄が入ったメッツの特製キャップがもらえる特別チケット2,500枚はすぐに売り切れました。野球を通して、日本の理解につながればという思いです」
―若い会員を増やすというのも課題ですね。
「若い人にJAAの役割をもっと知ってもらいたいと願っています。現在、ヤング・プロフェッショナル・グループを若い会員で立ち上げて提案をしてもらう計画です。親睦会などを通して、JAAが持つさまざまな役割の理解を深めてもらいたいと思っています。例えば、『JAAジェネラル奨学金』は1971年から続いており、ニューヨーク、ニュージャージー、コネティカット州内の高校を卒業しアメリカの大学に進学する日本人・日系人に奨学金を出しています。現在までに400人以上を支援し、彼らは日米の多分野で活躍しています。高齢者のケアやボランティアなどと同じように重要なプログラムです」
―最後に会員の構成を教えてください。
「会員は約1,000人で、現在は日系人よりも日本から来た日本人会員がやや多いと思います。ニュージャージー、コネティカット州に住む会員も1割以上います。ニューズレターは、日本語と英語で出しています」
(文と写真 津山恵子)