Vol.47 文字職人 杉浦誠司さん

「夢」には「ありがとう」、「挑戦」には「まえにいくゆうき」。漢字にひらがなのメッセージを乗せたオリジナル作品、「めっせー字」で想いを表現する話題の文字職人®、杉浦誠司さん。今月開催された「ジャパン・デー@セントラルパーク2016」では、初めて英語の作品も披露した杉浦さんの、作品に込められた想いとは。(インタビュー日時:2016年5月6日)

Profile:杉浦誠司
文字職人R(※)として、TVやイベント出演のほか、企業研修講師、小学生向け無料講演、PTA・学校講演などを行う。日本政府認定事業である、日本・カンボジア友好60周年記念でもパフォーマンスするなど、活動の場を広げている。(※)ひらがなを組み合わせて漢字を作る「めっせー字」の生みの親として、文字の力で人に笑顔、元気、勇気を与える杉浦誠司の呼称。

どん底でひらめいた、めっせー字

―個人や行政機関からもオーダーを受けるめっせー字。作品作りはどのようにしていますか。

 パッと浮かぶとき、じっくり考えるとき、作品によっていろいろです。時間が経ってから「違うな」と書き直すこともあるので、だいたい1カ月ほどかけて仕上げます。

―自分にもできるかなという人も多いかと思いますが、挑戦してみるとなかなか難しいですね。

 やろうと思ってもらえるのはうれしいですね。文字をさかのぼると、風景だったりモノの形といった象形文字ですが、それを「ありがとう」など、ひらがなで構成することで、今度はモノや見た目で表現していた漢字を、心や想いで表現する、僕は「表心文字」と呼んで新たな形で発信しています。

―漢字とメッセージ、どちらを先に考えますか?

 大半が漢字です。例えば当然のように使ってきた「感謝」という言葉。本当の意味は何だろうと掘り下げてみたときに、ふと、「都合の良い感謝をしていた」と気付いたんです。良くしてくれる人との出会いには感謝して、そりが合わない人と出会ったら、「なんで」と思うような。苦手な人でも、t6その人を通してすてきな出会いがあるとすれば、全ての人に感謝しなくてはいけないな、と考えたんです。

―そうした考えがあって、初めてめっせー字になるのですね。

 それで、「全ての人々へ心を込めて」という言葉で「感謝」を表現しました。パズルとして見れば、もっときれいにハマる言葉もあるんです。でもそれ以上にストーリーや想いを伝えたいですね。

―独特な詩にも情熱を感じますが、もともと「書」や「詩」は好きだったのですか?

 どちらも好きではなかったですね(笑)。書道なんかも習ったことがなくて。

―それは意外です。ではなぜ文字職人®に?

 僕の実家は警察官の家系で、将来は警察官になれと言われて育ち、窮屈でした。大人になって自分の人生は自分で決めると、いろいろな職業を転々としてそれなりの結果も出し、それで調子に乗って会社を起こしたけれど失敗しました。初めて借金を背負って、仲間も仕事もなくなって、どん底だったときに文字が夢でパッとひらめいて、僕自身が文字に元気をもらい、この文字で救える人がいるのではと、筆を握ったんです。

―その後すぐに活動を始めたのでしょうか。

 事業に失敗して妻に食べさせてもらうしかなかったときに、いてもたってもいられなくなって、名古屋駅の路上で「あなたを見て文字を書かせてください。金額はお気持ちで結構です」と文字を書くことを始めました。

―足を止めてくれる人はいましたか?

 全然いませんでした。1枚書いて10円、30円の世界。それが、今ここはニューヨークですよ! 今でも信じられません。すごい奇跡だと思います。

―文字職人®になる前と後、ご自身の中での変化とは。

 物事をいろいろな見方で見るようになりました。セールスマンだったころは、どうやったらこの商品が売れるかと、モノありきだったのですが、今は文字に反映されるネタを「いただこう」とアンテナを立てています。

―今後はどんな文字でもめっせー字にできそうですね。

 そうですね。過去にはカンボジアのクメール語で作ったこともありますし、いろいろな言語で作ってみたいです。