帰国生入試を行うなど、海外からの帰国生を応援する帰国子女受入校。各校の特徴や帰国子女受け入れの意義、海外経験をもつ生徒の強みなどについて伺いました。
同志社国際中学校・高等学校
―貴校では、70ヵ国にのぼる海外経験をもつ帰国生を積極的に受け入れられておられますが、貴校の求めておられる帰国生とはどのような生徒ですか?
本校の生徒のうち、60%が帰国生徒、40%が日本国内の一般生徒です。帰国生徒に関しては、やはり海外での学校生活にしっかり取り組んできているかということを重視しています。その国の文化、雰囲気をしっかりと理解し、それをしっかりと自分の言葉で伝えることができ、これまでの海外経験、自分の経験を誇りに思っているか、などです。
また今後の高校3年間もしくは中学校も含めた6年間は日本でしっかりとがんばっていこう、と思っているかどうかも大事なポイントです。日本に馴染むかどうかではなく、本校にいる間は、しっかりと日本で勉強しようと思っている生徒たちを求めています。
日本語に関しては、不十分でも問題ない入試方法もありますが、その後の学校生活を考えると、コミュニケーションをとれる程度にはできておいた方がよいかと思います。
ーそれらの帰国生を伸ばし、活かすために、どのような教育をこころがけておられるのですか?
本校は、帰国生徒が非常に多いこともあり、居心地の良い学校生活を送れる学校でありたいと考えています。クラスは帰国生徒と日本国内の一般生徒を隔てることなく、ともに刺激し合って学習できる環境を作っています。その一方で、なるべく個々の生徒の特徴を活かすべく、細かく、本人の雰囲気、状況にあわせた教育をこころがけています。一例として、語学で言うと、第2外国語は、5ヵ国語から選べ、継続的に外国語をキープできる環境を整えていますし、英語の授業は、レベルに合わせて、中学校では6段階、高校では4段階に分かれています。
また本校は、文部科学省の「ワールド・ワイド・ラーニングコンソーシアム構築支援事業」のカリキュラム開発拠点校に指定されています。
高校1年生では“まちづくり”をテーマに、さまざまな“まち”の取り組みについての紹介、まちづくりを考えていくにあたってのアカデミックスキルズなどを学びます。そのような中で、70ヵ国にもおよぶ帰国生徒がいる背景を活かして、世界中で自分が住んでいた街や住みたい街の発表を行っています。帰国生徒が、自分の住んでいた街の生活感やシビック・プライドなどを発表する中で、これまでの自分の経験に対する誇りをより感じることができ、国内からの一般生徒も実際に住んでいた国・地域の話を聞くことで、お互いが世界的レベルでの興味を持ち、理解を深めあえることができています。
このレベルで、直接クラスメイトなどから異なる海外経験を聞き、異なる習慣や考え方といった多様性に日常的に触れる機会は、他ではなかなか得られないのではないかと考えております。またそのような環境をつくることで、帰国生徒の皆さんも、そのような日本とは異なる環境で育ってきたことに対しても、自信・誇りを高めることに繋がっているのだと思います。
ー卒業した生徒さん達には、どのような大人になってほしいとお考えですか?そのような卒業生たちをご覧になったときの貴校の特徴をどのようにお考えですか?
私たちがいつも言っているのは、「日本や世界の情勢など世の中をよく見て、どういうフィールドで自分の力を活かすことができるのか」というのをよく考えなさいということです。ですから、我々がレールを敷くのではなく、その指針を示し、生徒たちが自分自身の“道”をみつけるためのサポートをしているという意識です。
大学進学にあたっては、同志社大学への推薦枠は多くあり、進学していますが、日本の他の大学に進学する生徒、海外の大学に進学する生徒もおり、それは生徒それぞれです。
卒業生の特徴としては、社会の活躍での幅の広さではないでしょうか。国内海外といった地理的なものもありますし、企業への就職においても、業界も非常に多様です。
アカデミックに研究を続ける、企業活動をしっかりと行う、放送業界で報道に携わる、国家公務員として国の業務を行う、医師、弁護士など、さまざまな分野で活躍しています。クラスメイトたちから、刺激を一生を通じて受けられる、多様性を実感しつづけられる、ということも本校の特徴だと誇りに思っています。
ー駐在で海外におられる方が帰国入試を考えるタイミングとしては、いつが適切なのでしょうか?
海外赴任される前ですね。なぜなら、赴任期間によっても、海外において教育に求めるものも異なると思います。例えば、赴任期間が、1年だけであれば、現地校にフィットされる難しさを考えると日本人学校の方がいいかもしれません。6年であれば、現地校やインター校の方がいいかもしれません。中間の3年だと、日本人としてのアイデンティティを意識して、現地校と日本人学校のどちらかを選ぶということかもしれません。
日本の教育システムでは、中高の教育内容はスパイラルになっています。高校1年生の4月から学べば、日本の教育内容のひととおりを学ぶことができます。したがって、最終的には、高校1年生の4月からの教育をどこでどのような学校で受けるかということを考えて、そこから逆算をしていくということが大切であると思います。
本校では、積極的に皆さんのご相談をお受けしています。ぜひとも赴任前、もしくは赴任後でもなるべく早く本校の説明会にご参加いただいたり、直接お問い合わせいただくのがいいかと思います。企業人事部の方からの問い合わせもいただきますし、やはり、期間的余裕があればあるほど、入学タイミングを目途に逆算したアドバイスなどもさせていただけると思います。
我々としても、入試直前にバタバタされる残念なケースをこれまでも数多くみてきていますので、いずれにしても、まずは一度説明会などに参加いただくのがいいのではないかと思います。
ー最後に、こちらにおられる保護者の方々にアドバイスがございましたら、お願いします。
本校に入学される方は、海外に長く暮らしていても、どこかで日本の学習をさせたい、日本の雰囲気を伝えたい、日本のアイデンティティを確認されたいという方が多いです。
やはりせっかくの機会として、自分の言葉でつたえられるようになるまで、その国でしっかり学習し、文化を十分に堪能してもらえればと思います。
海外の学校生活にしっかりと取り組むことが大切であり、特に、現地校やインター校での学校生活の副次的なものとして、それぞれの語学についての資格を取得しておくことは、自分の力を俯瞰する、入学試験に対応するという意味で、しておくべきことの一つと考えています。
本校では、多様な受験方法を採用していますので、それぞれの経歴にあった受験方法があるかと思いますので、募集要項をご覧いただければ方向性が見つかると思います。
【学校の基本情報】
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教育目標
Traveling together from the starting point of differences.
生徒たちには、入学後、本校での3年ないし6年の学びを終えたとき、興味・関心にとことんこだわるスペシャリストであっても、守備範囲の広い総合力を持ったジェネラリストであっても、自分がやりたい道を見つけてほしいと考えます。本校は校名に掲げている国際的な視野が広がる教育、そして、生徒自身が何にでもチャレンジできる環境を整えています。自分にとって、 将来の仕事や生き方において、自分の夢はどこにあるのか、本校で見つけてほしいと願っています。
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生徒数と帰国性の比率
中学校 :帰国生徒 178名 国内一般生徒 197名
高等学校:帰国生徒 475名 国内一般生徒 322名
- 教員の特徴や採用時に重視している点
専門知識をしっかりと持っていること、そして豊かな人間性を持ち、柔軟に物事に対応できることです。また、帰国生徒の教育に広い理解があることが重要です。
結果的に、世界を俯瞰できる視点が求められることになります。
【帰国子女クラスの特徴について】
帰国生徒のクラスというものはなく、国内一般生徒と帰国生徒が同じクラスで学んでいます。
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入学の選考方法として、重視する点
いずれの選考についても、現地での学校生活をしっかりと取り組んできているかという点です。
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入学に求める帰国子女生としての特徴
上記の選考に重視する点で示しましたように、現地での学校生活をしっかりと取り組んできているという点です。日本に帰国後に、学習・文化・習慣などについて比較しながら自分を豊かにしていける姿勢を持っていってくれればと思います。
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一般学級との違い
本校は、国内一般生徒と帰国生徒を区別せず、同じホームルームで互いに刺激し合いながら学習しています。
これは、帰国生徒が半数を超える環境(日本では、約5000校の高校がある中で、ICU高校と本校の2校のみ)ならではであると思います。
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特徴的な授業内容の具体例
授業形態としては、英語が中学校で6段階、高校で4段階、第二外国語が英語以外に5言語選択可能で、2段階のレベル別であること。また、日本語が未習熟であったり、数学の未学習分野がある場合には、小さなクラスで学習します。
特徴的な学習としては、文部科学省のWWL(ワールド・ワイド・コンソーシアム)の拠点校として、高校1年生ではSSS(Sustainable Society Study)という授業を全員が受講、高校2年生ではSSR(Sustainable Society Research)、高校3年生ではSSD(Sustainable Society Design)という授業を選択科目として設置しています。これは、街づくりをテーマにして、1年生では、街づくりの事例を学びながら、講演の聴き方、質問の仕方、パワーポイントの作成の仕方などのアカデミックスキルズを学びます。2年生では、リサーチを深め、3年生では、街づくりについての提言を行っていくというプロセスです。いずれも、各教科の深い知識を基礎にして、社会との関連性を高めた授業を行っています。
【カリキュラム、進学先などについて】
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選択授業の例や豊富さについて
中学校では、英語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、韓国・朝鮮語、中国語
高校では、上記の語学選択は全学年で行うことに加えて、2年生ではさらに4単位、3年生ではさらに8単位を選択します。(下記参照)
高校では、いわゆる理系の生徒と文系の生徒も混合のホームルームです。
その中で、大学の希望学部や学科にあった科目を上記の選択科目などから選択する形をとっており、授業ごとにメンバーが変わります。
- 課外授業の例
宿泊研修、遠足(中学校)、球技大会(高校)、文化祭、校外学習、研修旅行(平和学習)など。
また、海外の短期留学(2~5週間)は希望者に8コース程度設置しています。
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他クラス、他学年、他校や卒業生との交流について
本校は、コース別特化型の学校ではなく、普通科の学校ですので、同一キャンパスに日常的に中学生と高校生が生活しています。また、卒業生が、キャリア教育の協力として、ホームルームの授業時に話をしに来てくれたり、放課後に海外大学進学の体験談を話をしに来てくれたりしています。 -
進学先のサポートとして行なっている取り組み
学内大学については、各学部の説明会が行われています。
海外の大学への進学については、教育開発センターが説明会を開き、進学相談にも随時対応しています。その際、卒業生の体験談を聞く企画なども行っています。
その他、推薦指定校や国内他大学進学については、随時相談を受け付けています。
その結果、基本的に100%が大学に進学し、99%は現役で進学しています。
90%近くが同志社大学系に進学、残り約10%が、海外、指定校、国内他大学受験というのが例年の内訳です。
同志社国際中学校・高等学校
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