贈与税(Gift tax)の日米比較
問1:米国の贈与(Gift)は、日本の贈与と比べて違いがあるのですか?
解答:日本の贈与では、年間110万円までは基本的に贈与税を払う必要はありません。これを暦年贈与といいます。しかし、受贈者が暦年贈与額を超えた贈与を受け取ると、贈与税を支払わなければなりません。
問2:もし、Aさんが、父親と母親からそれぞれ100万円の贈与を年度中に受け取ったとすると、受贈者であるAさんは、年間総額200万円の贈与を受けたことになり、110万円(基礎控除額)を超えた90万円について贈与税を支払うのですね?
解答:その通りで、贈与税の支払いが発生します。2015年度の法律改正後は、親や祖父母からの贈与には、第三者からの贈与に比べ低い税率が適用されるようになりました。一方で、米国では贈与税を払わずに受ける贈与の基礎控除額は年間1万4千ドル(2016年度)です。そして、米国の贈与税の納税者(支払者)は、贈与者です。つまり、年間1万4千ドルを超えて贈与をした場合、贈与税を納めるのは、贈与をした贈与者であり、受け取った受贈者ではありません。
問3:具体的な例を説明してください。
解答:Aさんが父親と母親からそれぞれ1万ドルの贈与を2016年度中に受け取ったとすると、米国では、受贈者であるAさんは、年間総額2万ドル贈与を受けたことになりますが、贈与税の支払いをする必要はありません。一方、贈与者の父親はAさんに年間1万4千ドルを超えた贈与をしなければ(この場合していない)、2016年度は贈与税の支払いは発生しません。同じように、母親もAさんに年間1万4千ドルを超える贈与をしなければ(この場合していない)、2016年度は贈与税の支払いは発生しません。
問4:では、この米国の例では、もし父親(または母親)が子どものAさんに1万4千ドル超の贈与をした場合にのみ贈与税が発生するのですか?
解答:その通りです。また同じように、父親が別の子どもBさんやCさんに年間1万4千ドルを超えない贈与をすれば、贈与税は発生しません。母親も同様です。つまり、生前贈与を活用して、親の資産を圧縮して相続税の負担減効果を狙う場合、日本では子ども1人当たり年間110万円が限度額ですが、米国では子ども1人当たり、片親からそれぞれ1万4千ドル、合わせて年間2万8千ドルが限度額となります(2016年度)。実は、米国にはこの贈与税のルールを活用した、人気の投資商品が存在します。
問:ぜひ教えてください。
解答:いわゆる、大学資金準備口座「529 College Saving Plan」です。米国の大学、特に私立大学の授業料は高騰していているので、子どもが小さいうちから将来大学で必要となる学費を貯めておく、という目的で開設し積み立てていく投資口座です。積立額は、投資信託で運用されます。運用益は繰延課税(引き出すまで課税されない)が適用されますが、それら運用益が口座から引き出され、大学の授業料や寮費などの適格大学教育費に使われると、非課税となります。この口座の特徴は、所有者(Owner)は親(父または母)で、受取人(Beneficiary)を大学に行く(予定の)子どもに指定して開設します。そして、所有者は毎年最大1万4千ドル(2016年度)まで口座に積立することが可能です。つまり、口座の所有者=贈与者が、口座の受取人=受贈者に対して暦年贈与の形で積み立てを継続していくものです。従って、大学に行く予定の子どもは、毎年両親から合わせて最高2万8千ドルまでの学費を準備することが可能となります。
Financial Advisor / Tax Specialist
羽山 徹
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