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共同通信
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【キーウ共同】ウクライナ料理界の有名人で、現在は南部の激戦地ザポロジエ州の前線で調理を担当する兵士のルスラン・レチマンさん(52)が16日までに共同通信の取材に応じた。ロシアの侵攻から600日以上が経過。多くの仲間を失い心身の消耗が激しい中でも戦場に立つのは「わが子や次世代の若者を戦地に立たせたくないからだ」と語った。
前線ではヘリコプターやミサイルが頭上を飛び交う。自ら掘った塹壕に身を隠し、缶詰や現地調達した野鳥を食材に、食事を提供する。突然降り注ぐ迫撃砲や銃弾に身をこわばらせる日々のストレスは強く、うつ状態に見える兵士も少なくない。
死と隣り合わせの戦場の支えは戦友だ。特に軍事訓練でもペアになった調理助手の男性兵士(22)とはウマが合った。休暇になるとレチマンさんが勤めたレストランを訪れ、味の良さを報告してくれる好青年。
今年6月、知人からこの調理助手の死を知らされた。最後のやりとりは「死ぬなよ」という励まし合い。職場の同僚やその家族の戦死の報も耳に入り、悲しみが癒える暇もない。