連載1112 負けがわかっていても突き進む 大阪万博は「インパール作戦」「本土決戦」なのか? (中2)

連載1112 負けがわかっていても突き進む
大阪万博は「インパール作戦」「本土決戦」なのか? (中2)

(この記事の初出は2023年10月10日)

もう一つの大問題は絶対的な電力不足

 この万博の問題点を指摘したらキリがないが、あまり言われていないことに、電力の供給不足問題がある。
 この点を指摘した「JBプレス」の神宮寺慎之介氏の記事『いまだ海外パビリオンの建築申請ゼロ、ついに出てきた大阪万博「1年延期説」』によると、会場内はオール電化システムになる予定であり、パビリオンを提供する参加国・地域には、協会からあらかじめ電力の割り当て量が伝えられているという。
 しかし、その割り当て量では、たとえば、飲食を提供するパビリオンなどはでは、電力が絶対的に不足するそうで、ランチタイム中にブレーカーが落ちて停電になる可能性すらあるという。
 そのため、「増やして欲しい」と要望を出したところ、協会側は「それはできない」と返答。そればかりか、「電力が足りないならプロパンガス(LPガス)で補って下さい」と言われたというから、驚く。
 ただし、LPガスはCO2排出量が少ないため、地球温暖化対策には有効なエネルギーとされている。 燃焼後も少量のCO2と水に変化し、有害物質が発生しない。しかし、そうは言っても、この対応はない。LPガス業者に供給を依頼せねばならない。
 2025年の夏が今年並みの「猛暑」だったら、どうするのだろうか?

現代の「インパール作戦」「本土決戦」か?

 このように、どう見ても失敗するのがわかっている大阪万博を、最近は「現代のインパール作戦」と言うようになった。無謀でデタラメな作戦を立案し、それを強行した日本軍は、案の定、飢えと疾病で兵士たちを次々に失い、撤退路に死体の山を築いた。大阪万博も強行すれば、「白骨街道」ができるのは間違いないと言うのだ。
 それにしても、なぜ、日本政府は同じ過ちを繰り返すのだろうか? 私は、「インパール作戦」より、「本土決戦」に近いと思っている。
 すでに負けがわかっているのに、この国の上層部は「本土決戦」と叫んで、竹槍しかないのに最後まで戦おうとした。国土が焦土と化し、大勢の命が失われる。それがわかっているのに、なぜ、もっと早く降伏しなかったのだろうか?
 日本政府は一度決めたしまったことは絶対に止めない。その結果、「日本病」はどんどん進行し、日本は先進国から転落してしまった。
「日本病」は海外では「ジャパニフィケーション」(Japanification:日本化)と呼ばれ、低成長、低インフレ、低金利が常態化し、経済が長期停滞することを指す。
 バブル崩壊以後、歴代の自民党政権は、30以上の「経済対策」を打ってきたが、アベノミクスを含めすべて失敗した。なぜなら、その対策というのは、ほぼみな同じだったからだ。日本はこの30年、同じことを繰り返してきたのである。
 国債を発行して政府の借金を増やし、増税を繰り返し、そのカネを業界中心に単にばらまく。これを経済対策と言っているのだから、ジャパニフィケーションが止まるわけがない。

(つづく)

この続きは11月17日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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