第五回 ゲスト:接客のプロ「大道昌利」さん
毎月焼酎好きで有名な各業界の「プロ」をゲストに迎え、焼酎と言ったら「この一本 !」を選んでいただくこのコーナー。さらに焼酎にまつわる人生エピソードを焼酎ソムリエ大竹彩子とインタビュー形式で語っていただきます。焼酎のプロと各業界のプロの焼酎トークお楽しみください。
−−今回はミシュラン3つ星フレンチレストランLe Bernardineのキャプテン、大道昌利さんをお迎えしました。かの有名な一流店に、どのような経緯で入られたのでしょうか。
大道: 8年前、日本食レストランのマネージャーをしていたころ、「中の上よりも上の下のほうがいい、非日系のミシュラン3つ星レストランで日本人のトップに立ってやろう」と。
−−すごい志です。そしてフロアサービス(接客)という分野で8年間3つ星を守り抜いていますが、焼酎との出会いは?
大道: 約10年前ロサンゼルスで訪れた日本酒イベントで、森永君(現、杜の蔵社長)に会ったんだ。彼の造る日本酒が気に入った僕は福岡まで彼に会いに行って、中洲の夜を2人酩酊して(笑)。そのときに彼の蔵が造る酒粕焼酎「常陸山」を初めて飲んだ。酒粕焼酎をよく知らない僕には正直おいしくなかった。ただ、こんなに造り手の人柄が出ている酒を僕は知らない。森永君が言ったんだ、「俺の造る酒は横になって床に脇腹をついて飲んで欲しい」って。お酒をおいしくするのって人生から出たカスだったりするじゃない。そこに人間味があったり生まれたりするよね。
−−焼酎との出会いをこんなに深く語ってくださった方は初めてです。オススメの飲み方は?
大道: トワイスアップ(氷なしでアルコール1に対して水1)、水も常温で割るのがポイント。
−−今回「常陸山」を選んだ背景には、ひとかたならぬ思い入れがあるようですね。
大道: そのころある女性と知り合ったんだ。彼女実は重い病気で、でもどうしてもここに来る夢を果たしたかったんだって。彼女は日本に帰る直前、当時まだ若くて意気がっていた僕に、「いつか大道君が失敗するところを見てみたい」って言った。衝撃だった。そして死へのカウントダウンを始めた彼女に贈ったのが「常陸山」。飲める体じゃないはずなのに、「もったいないから毎日少しずつ飲んでいます」ってお礼の手紙をくれた。彼女が亡くなった2008年4月末に、彼女の言葉を思い出して頑張らなきゃって今の店の門を叩いた。彼女のおかげなんだよね、今の僕があるのは。今では僕の代わりに森永君が「常陸山」を持って仏壇に手を合わせに行ってくれいて、だから「常陸山」は僕にとって森永君と彼女と僕をつなぐ大切なもの。カス酒でも僕にはサイコーのお酒。
−−壮絶なストーリーに感動しています。最後に「接客のプロ」大道昌利にとって酒粕焼酎「常陸山」とは?
大道: 僕にとっての「4th Star」。ミシュラン3つ星の上に光るもの。
酒粕焼酎「常陸山」
株式会社 杜の蔵(福岡県) 原材料:酒粕
古式のセイロ式蒸留法から生まれた昔ながらの酒粕焼酎。個性的な力強さをもつ芳醇な味わい
大竹彩子
東京都出身。2006年、米国留学のため1年間ミネソタ州に滞在。07年にニューヨークに移り、焼酎バー八ちゃんに勤務。13年10月に自身の店「焼酎&タパス 彩」をオープン。焼酎利酒師の資格をもつ。
焼酎&タパス 彩
247 E 50th St (bet 2nd & 3rd Ave)
212-715-0770 www.aya-nyc.com