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共同通信
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故郷の海は、鬼に見えた。能登半島地震で津波に襲われた石川県能登町の白丸地区には猛烈な速さで水が押し寄せた。15日で発生から2週間。至る所で片付けられないままがれきの山が残る。
坂元信夫さん(67)が車ごと波にさらわれたのはあっという間だった。最初の地震で避難の用意を始めた際に2度目の揺れが起き、車に乗り込もうとしたところを背丈以上の波が襲った。
そばにいた小学2年の孫娘がいない。波を必死にかき分け、引き上げたが、呼びかけに反応はない。人工呼吸し、名前を叫びながら頬をたたき、ゆっくりとまぶたが開いた。抱きかかえ、高台を目指し駆け上がった。家族は全員無事だった。家の片付けは先が見えないが、「命が助かっただけでも」。
「海が憎い。もう見たくない」。涙をにじませたのは砂山由美子さん(65)。家は津波が押し流した。畑を分厚く覆うぬかるんだ砂。チューリップが咲くのを心待ちにしていた。
朝日が昇る時間に砂浜を散歩するのが好きだった海は「鬼と化して、全てを奪っていった」。「結局、津波なんて人ごとだと思っていた」