前回は、ニューヨーク市周辺への転入で子供の学校探しをする時のために、ニューヨーク市内とそれ以外の地区(ニューヨーク市郊外、ニュージャージー州、コネティカット州)の公立学校システムの違いを紹介した。今回は地元にいなくてもできる、各学校情報の収集を紹介する。
教育局によるデータの公開
アメリカ公教育の情報公開は非常に進んでおり、「こんなことまで?」と驚く程の詳細な情報が、各州や自治体の教育局のウェブサイトで世界中から閲覧できる(表1)。例に挙げると、
生徒構成:在籍生徒数/学年別/男女別割合/人種別割合 (家庭で使用する母国語別もある)/母国語が英語以外の生徒(English Language Learner=ELL)の割合/障害を持つ生徒(Stent with Disability=SWD)の割合/経済的に不利な生徒(Economically Disadvantaged)の割合/フリーランチ(給食代の無料・減額)の生徒の割合など。
州統一テストスコア結果:(テスト名とレベル分けの方法は州により違う)全校生徒別/学年別/男女別/人種別/ELL、SDWのステイタス別のテスト結果のレベル別分布の公開など。
アカデミックパフォーマンス:中学・高校で各学年の過程をパスした生徒の割合(Grade Passing rate)/高校卒業率/その後の進学率など。
生徒関連:出席率/長期欠席生徒(Chronicle absence)率/停学率/いじめ発生率など。
教師スタッフ関連:教師平均滞在年数/修士号取得教師の割合/スタッフ人数/教師の入れ替え率など。
家族、生徒、教師へのアンケート調査結果:安全性/いじめ/教師・学校側とのコミュニケーションの質/PTA出席率/PTA活動/校舎・環境の設備への満足度や清潔感/教師との年間面会数/教師の校長などマネージメントに対する満足度など。
スクールリポートカード
行政の学校へ対する成績表のようなもので、名称は違うが、以上のデータをまとめ分析をしたものが、学校ごとに発表されている。
これでも一部に過ぎないが、各学校区、学校単位で客観的データ、主観的評価含め全てが公開されている。
民間の学校情報のウェブサイト
実際にこれら公開資料に目を通すのは大変だ。そこで学校選びをする家庭にとって重要と思われるデータを抽出し、見やすくまとめ、かつ複数校を並べて比較しやすくしている民間のウェブサイトの利用が人気だ。
特にニューヨーク市は公立学校が多く、学校選びのプロセスが複雑なため、生まれ育った市民の家族も困惑する状態である。そのため、多くの教育関連ウェブサイトやサービスがある。中でもInside Schoolsはその代表的なサイトだ(図1)。
ここで、PTAや主催者のコメントなど、生の声を聞くこともできる。
新聞、雑誌が毎年発表する学校ランキングも参考になる。英語で「地域、学校の種類、Ranking」で検索する。これらのランキングは各教育局発表のデータを基準に作成されているが、媒体により、どの項目を何パーセント考慮するかが異なるため、必ずしも同じ学校が同じ順位で示されるとは限らない。ランキングのソースと基準は通常各ウェブサイトに書かれているので、それを参照する。学校情報のみでなく、アメリカの一般的な教育システムなどの記事も豊富で役立つ情報が多い。
日本語での情報は新しさが肝心
日本語フリーペーパーなど、地元メディアや保護者グループの学校情報もインターネットでアクセスすることができる。教育関係者の記事や、個人ブログの体験記も有効だろう。
しかし、アメリカは州ごとに学校システムが違うことを覚えておこう。学期の日時や入学する年齢も異なる。またニューヨーク市は毎年いろいろな改革が実施されているので、3年前でも情報は古くなっている可能性がある。
日本語での情報は頭に入りやすく便利だが、必ず記事の書かれた年と州と地域を確認するようにしよう。
アメリカ各地で発行されている「便利帳」などは毎年更新され、日本人居住者の多い地区の各学校の紹介とデータが掲載されている。
学校のウェブサイト
ニューヨーク市の場合、同じようなプロフィールの学校でも、学校によって特色が大きく異なる。日本で私立学校を選ぶように教育方針が異なると言っても過言ではない。「トラディッショナル教育」と「プログレッシブ教育」など、同じ成績、同じ生徒構成、同じ地区でも、学びの体験は大きく変わる。
独自の特色は学校がアピールするところでもあるので、学校のウェブサイトに詳しく書かれている。その他生徒の様子、スタッフ、教師、行事や特別クラスやアフタースクール、クラブ、スポーツチームの種類など、入学後の学校生活が想像できるのも学校のウェブサイトの強みだ。(文=河原その子)