「私が結婚するはずだったのに」

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共同通信
マティン王子(左)とアニーシャ妃(マティン王子のインスタグラムから・共同)

 東南アジアで最も人気がある独身王族とされたブルネイのマティン王子が1月、結婚した。爽やかな容姿で、マレーシアやシンガポールなど国境を超えてイスラム教徒の女性の心をつかんできた。結婚の知らせにソーシャルメディア上ではショックの悲鳴が広がった。(共同通信=角田隆一)

 「さよなら、私の王子」。「私が結婚するはずだったのに」。王子はボルキア国王の四男。お相手のアニーシャ妃との結婚式の様子を各国メディアが報道すると、ソーシャルメディアの投稿が相次いだ。閣僚などを歴任した祖父を持つアニーシャ妃と王子は幼少時から面識があったとされる。

 人気の理由は王子のソーシャルメディアだ。写真共有アプリ「インスタグラム」のフォロワーは約300万人を超えブルネイ国民の約7倍。自動小銃を抱えての訓練や、ポロの練習風景などを投稿している。「王室随一の人気者。肉体美とアイドルのような容姿を兼ね備えている」(地元記者)。地元のイベントに参加し、気軽に市民と触れ合う姿勢も評価される。

 父王の信頼も厚く、主要な外遊に随伴。2019年の天皇陛下即位の礼や、2023年12月の日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)との友好関係樹立50年の会議でも訪日し、陛下との会見や岸田文雄首相との会談をこなした。

 王子の王位継承順位は高くない。それにもかかわらず、10日間続いた祝賀行事にはフィリピンのマルコス大統領、マレーシアのアンワル首相、シンガポールのリー・シェンロン首相らが顔をそろえ、外交団を驚かせた。

 資源国ブルネイは事実上の君主制で国王が首相、国防相、外相などを兼ねる。古くからの海上交通の要衝で、南シナ海問題でも周辺国と連携する。東南アジア外交筋は「世代交代を見据え、次期国王を支える王子を重要視している表れだ」と話した。

ブルネイ・バンダルスリブガワン
マティン王子(右)とアニーシャ妃(マティン王子のインスタグラムから・共同)
結婚関連行事でのマティン王子(中央)とアニーシャさん=2024年1月、ブルネイの首都バンダルスリブガワン(ブルネイ政府提供・AP=共同)
結婚関連行事に出席するマティン王子(右から2人目)とアニーシャさん(同3人目)=2024年1月、ブルネイの首都バンダルスリブガワン(ブルネイ政府提供・AP=共同)