共同通信
北海道の十勝地方特産「十勝川西長いも」を使った宇宙食が誕生した。帯広市川西農業協同組合(JA帯広かわにし)が発案し、札幌市のフリーズドライ食品会社「極食(きょくしょく)」が開発。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の厳しい審査基準をクリアして認証を取得し、安全性はお墨付きだ。極食の阿部幹雄代表(70)は、閉鎖空間に長期滞在する宇宙飛行士の「元気の源になれば」と期待する。(共同通信=英佳那)
鮮やかな色合いのトマト煮込みや定番のとろろ、ほくほくとした食感のオムレツ―。宇宙食5種には、同JAなど地元10農協が生産したナガイモが使われている。
十勝川西長いもは米国や台湾などへも輸出されるブランド品で、生産施設では以前から食品衛生管理などの国際基準「HACCP(ハサップ)」「SQF」の認証を取得し、品質保証を進めてきた。同JAの有塚利宣(としのぶ)組合長(92)は「食の安心・安全をさらに向上させるため、宇宙食の認証取得を目指そうと考えた」と狙いを語る。
JAXAによると、宇宙食は栄養補給に加え、ストレスを和らげてパフォーマンス向上を図る目的もある。認証には衛生管理や品質、保存性、輸送性など多くの条件を満たす必要がある。
南極観測隊に参加して食料の軽量化に取り組み、フリーズドライの知見がある阿部代表に同JAが打診し、2018年に開発を開始。ナガイモは土壌由来の大腸菌群が付着しているため、通常は加熱調理しないとろろも高温殺菌するなどの対応が必要だった。
「生産者に喜んでもらえるように」(阿部代表)と、牛肉や牛乳といった他の食材も十勝産を中心に使用。見た目にもこだわり、料理の断面が彩り豊かになるように工夫し、2023年11月に「宇宙日本食」と認められた。
同JAは、非常用の保存食への活用も検討する。有塚組合長は「相次ぐ災害で必要性が増している。社会貢献に取り組みたい」と意欲を示した。