共同通信
天皇、皇后両陛下の活動を紹介するインスタグラムのフォロワー数が着実に伸びている。宮内庁が4月から公開を始め、約1カ月で120万人を超えた。
「丁寧に務めを果たされている姿を伝え、皇室への理解を深めたい」と幹部は語る。
交流サイト(SNS)を使った新たな情報発信の背景にはインターネットで広がる中傷への対策の側面もある。(共同通信=志津光宏)
▽タイムリー
能登半島地震のお見舞いで3月22日に初めて石川県を訪れた11日後、公開されたばかりのインスタに、被災者の苦労に耳を傾けられる両陛下の写真が投稿された。
15万を超える「いいね」がつき、幹部は「できるだけ、タイムリーに更新していく」と意気込む。
実務を担うのは昨年4月に新設された「広報室」だ。全日空や日本サッカー協会で広報などを経験した人たちが広報推進専門官として加わり、当初からSNSを視野に入れて戦略を練った。
インスタを選んだ理由は「これまで皇室になじみが薄かった若年層への浸透度が高い」との分析だ。
写真だけでなく、「松の間」など格調高い宮殿内の様子や、皇居の豊かな自然を動画として投稿している。
▽正確
導入の背景には、2021年に実現した秋篠宮ご夫妻の長女小室眞子さんの結婚問題があった。
ネットなどに誹謗中傷と取れる書き込みがあふれ、眞子さんは複雑性心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。
宮内庁は皇室バッシングへの対応を迫られたが、一つ一つに具体的に反論するには無理があり「正確な情報を、こちらから積極的に発信して対処する」とした。
投稿内容は当面、両陛下の公務に限り、私的な部分には立ち入らない。
神戸学院大の鈴木洋仁准教授(歴史社会学)は、慣例重視の宮内庁がインスタを取り入れたことに驚く。「多くの人が使っており、国民と皇室の距離が縮まるだろう」と期待する。
一方で「投稿がどのような形で批判の対象になるかは分からず、慎重さも欠かせない」と話した。