今夏もスーパーエルニーニョで猛暑は確実
さて、最後に述べておきたいのは、今年の夏もまた猛暑になるかどうかだが、これは間違いないという。すでに気象庁は、夏の予報を発表している。それによると、西・東日本では平年に比べ暑い夏になる確率が60%という。
60%というのは、この10年でもっとも高い確率なのだそうだ。その理由は、2023年8月以降、基準値を2度以上上回っていて、非常に強いエルニーニョ現象(いわゆるスーパーエルニーニョ)が続いているからだという。
今年もまた梅雨の到来が遅れる。したがって、梅雨入り前の6月から厳しい暑さが予想される。その一方で、梅雨に入ると、前線が長期停滞し、梅雨明けが遅れる可能性があり、西日本や東日本の太平洋側ほど、長雨や一時的な低温となるリスクがある。しかし、いったん梅雨が明けると、猛暑の夏が到来するというのだ。
もちろん、猛暑は日本だけではない。「NOAA/NCEI」(アメリカ環境情報センター)によると、2024年世界の平均気温がトップ5に入る確率は99.1%と予測されている。
猛暑で消費は増えても経済はよくならない
猛暑は個人消費を増やし、経済を活発化させるという話がある。エコノミストは、それをまことしやかに言う。確かに、飲料や家電といった猛暑関連消費が増加するのは間違いない。
さらに、人々は家にこもっていられないので、各地にレジャーに出かけ、レジャー、旅行関連消費が増えるという。
しかし、それは好景気には繋がらない。
というのは、まず、電気代が増える。さらに、気候変動が激しくなれば、食品価格が高騰する。とくに、キャベツやハクサイ、レタスなどの野菜はその影響をもろに受ける。さらに、熱中症などの健康被害も多発する。
じつは「猛暑は大きな経済的損失を生み出している」という見方が有力だ。「ビジネスインサイダー」(2023年4月)が紹介しているダートマス大学のジャスティン・マンキン准教授の試算によると、猛暑による気候変動は1992年以降、世界各国で平均16兆ドルの損出を与えてきたという。
また、2023年10月、英「ロイズ・オブ・ロンドン」(ロイズ保険組合)は、気候変動により、今後5年間に世界で生じる経済的損失が総額5兆ドルに上る可能性があるとの推計を発表している。ロイズは「異常気象や気候関連リスクによる世界の経済的損失のうち、現在保険でカバーされているのはその3分の1にすぎない」と指摘している。
今週末ごろまでに桜は散り、葉桜、風光る季節となる。しかし、いきなり夏となり、昨年を上回る記録的な猛暑になる可能性がある。
(了)
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※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。