アジア系へのヘイト、過小報告解消へ
匿名で可能、データベース新設
5月は「アジア・太平洋諸国系米国人(AAPI)の文化継承月間」。ニューヨーク市内でアジア・太平洋諸国系住民を支援する2つの非営利団体(NPO)が、ヘイトやバイアスに基づいた事件を報告できるデータベース「AAPIヘイト・トラッカー」を立ち上げた。 報告によると、過去12カ月に、アジア系住民の5人に1人が身体的攻撃を受けている。
2つのNPOは中国系米国人の支援団体「Committee of 100」と「アジア系米国人財団(TAAF)」。トラッカーは、ハラスメントや身体的攻撃などを受けたアジア系および太平洋諸国系ニューヨーカーに報告してもらい、情報を蓄積する。そうした事件の目撃者も報告することができる。トラッカーの立ち上げにあたっては、米司法省の支援も受けている。 ヘイトクライムのデータベースには市警(NYPD)の「ヘイトクライム・ダッシュボード」がある。ただし、全ての事件が犯罪となるとは言えない。加えてアジア系住民はこうした事件をNYPDに報告しない傾向がある。 TAAFがまとめた調査「NYC Safety Study」によると人種に基づくハラスメントや侮辱、精神的攻撃を含めると2人に1人になる。アジア系の女性の83%は最大の懸念事項としてニューヨーク市の治安を挙げていることも明らかになった。
しかも、同調査によると、ヘイト犯罪の標的となったアジア系住民でNYPDに報告したのはわずか46%。目立ちたくない、報告の方法がわからない、警察に対する不信感があるなどが障壁となっている。 トラッカーは使いやすく、匿名で報告することもできる。法律や心の問題、社会保障制度の活用に関する支援情報も提供。言葉の面でのサポートもある。
TAAFの報道担当者は「トラッカーはヘイトやバイアスの事件をより正確に把握することができ、実態を反映する」と指摘。「データベースを分析し、ヘイト、バイアス、暴力などの根本的な原因を探って証拠に基づいた対応策を提唱したい」と話している。(14日、amニューヨーク)
関連記事
アジア系に根強いヘイトへの懸念 映画、TVでも存在薄く冷遇
アジア系住民の半数以上、ヘイトを体験 報告するのが「恥ずかしい」も2割