共同通信
フィリピンのスラム街に住む人たち向けにファッションを通じて教育と就労の機会をつくり出そうと、日本人女性が首都マニラに開校したファッションスクールの運営が軌道に乗り始めた。生徒は無償で通学できる。おしゃれを楽しむだけでなく、服飾の技術と知識を身に付けて「夢をかなえるための土台にしてほしい」と意気込んでいる。(共同通信=岩橋拓郎)
校名は「coxco Lab(ココラボ)」。神戸市のアパレル会社「coxco(ココ)」代表の西側愛弓さん(29)が中心となり、昨年2月に開校した。
1期目の生徒は、応募者約30人の中から面接で選ばれた16~24歳の男女8人。全員マニラのスラム街に住んでいるという。校舎は借りた一軒家。授業は週1日で、日曜日の朝から夕方までデザインや縫製の技術を学ぶ。座学もあり、ファッション産業が絡む大量廃棄などの社会課題や歴史も勉強している。
最年長の24歳の女性は、子育て中のお母さん。生計を支えるために12歳から家政婦として働いてきた。「裁縫をしている時はつらいことを忘れられる。学んだことを家族や地域社会に還元したい」と張り切っているという。
運営資金には企業からの協賛やココの売り上げの一部を充てているほか、クラウドファンディングで募ったこともある。最近は現地の企業からの注文を受け、生徒たちが社員用のおそろいのTシャツや制服を作り、収入につなげている。マニラ日本人会の盆踊り大会用の法被も納品した。利益を確保できるようにし、ビジネスとして成り立たせたい考えだ。卒業生をココで雇うことも目指している。
西側さんは大学生だった2015年からマニラで貧困層の子どもたちを主役にしたファッションショーを開催し、2024年2月に10回目を迎えた。ファッションを軸に、貧困から抜け出すために努力できる環境を整えたいと学校開設を思い立った。
西側さんは「手探りで何とかやってきた。しっかり未来をつくるお手伝いをしたい」と語った。