あるのか「6月解散、7月総選挙」 政権継続でも交代でも日本の衰退は加速する(下)

維新次第で決まる次期政権のかたち

 以上、選挙予測をざっと見てきたが、予測どおり、自公過半数割れとなった場合、岸田退陣はもちろんだが、その後の政権はどうなるのだろうか?
 考えられるのは、次の2つのシナリオだ。
(1)与野党間での政権交代が起こり、立憲を中心に野党が結束して非自民政権ができる。
(2)自公が維新を抱き込んで、自公維新による「保守政権」が継続する。
 この2つのうち、可能性が高いのは(2)のほうではなかろうか。自民を敗退させた有権者は(1)を望むと思うが、それを維新が裏切るかたちになる。なぜなら、維新は野党の仮面をかぶったポピュリスト政党だからだ。
 日本維新の会の馬場伸幸代表は、常々、立憲民主党の議会対応を批判し、「立憲を叩き潰す必要がある」と言ってきた。
 この馬場という人間は、能登地震のときに「万博があるから(被災者たちも)頑張ってほしい」と言ってみたりする、まったく傲慢極まりない人間で、維新はいま離党者が続出している。
 大阪万博に対する無責任ぶりをみても、この政党は自民の腰巾着政党と言ってよく、ポピュリズムによる権力志向だけでビジョンというものがない。
 もっとも、ビジョンなしは全政党に言えることだ。立憲のなんでも反対で、政治理念の低さにも呆れる。

問題は選挙結果より、投票率の異常な低さ

 多くのメディアは、いま、裏ガネ問題を叩き、歴史的円安をもたらした経済失政を叩くことで、次回選挙で自公が下野し、日本の政治が改革されるという方向で報道を繰り返している。
 本来なら、もっと深く分析し、日本の危機をどうやって乗り切るべきか提示すべきだが、そんなことをするマスメディアはない。先の衆院3補欠選挙の報道を見ても、「自民3連敗」を言うだけで、投票率の異常な低さについては大きく取り上げなかった。
 3選挙区とも、以下のように大きく投票率を下げているのは、異常事態ではないのか?
 東京15区=40.70%(2017年の55.59%を大幅に下回る)
 島根1区=54.62%(2014年の57.94%を下回る)
 長崎3区=35.45%(2014年の51.58%を大幅に下回る)

改革できる人がいなければ改革は無理

 東京15区は候補者乱立で、もっとも注目されたというのに40.7%の人間しか投票していない。長崎3区にいたっては自民党から候補者が出なかったこともあるだろうが、過去最低の前回を16ポイントも下回り、35.45%の人しか投票していない。
 こうしたことが示すのが、どんなことが起ころうと、日本人の半数は投票しない。政治などどうでもいいと思っていることだ。議員が裏ガネをつくろうと、円がどんどん安くなろうと、物価が上がって生活が苦しくなろうと、それを投票行動によって変えられるとは信じていないということだ。
 つまり、自民にしても野党にしても、この日本を変えることはできない。できる候補者などいないと思っていることだ。よく、街頭インタビューで「入れたい人がいない」という声を聞くが、それが、この投票率の低さに結びついている。
「入れたい人」=「日本を改革できる人」とすれば、それがいないのだから、次の総選挙でなにが起ころうと、それは単なる「政局」にすぎないだろう。
(つづく)

この続きは6月10日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

 

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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