ニューヨーク市公立学校進学における4年生と7年生の重要性(2)

 
 11月23日、トランプ次期大統領が、アメリカ合衆国教育省の長官にベッツィ・デヴォス氏を指名した。新政権に変わると、アメリカの学校教育、学校生活に今後どのような影響と変化がもたらされるのだろうか?

マッチングに使用されるファクター(要素)

中学・高校ともに生徒と学校をマッチングさせる要素は
①生徒の志望校、志望プログラムの優先順位
②生徒の学校情報(成績、学校生活の態度など)
③学校の定める優先順位(在籍者優先枠/地理的優先順位など)
④選考メソッド
⑤席数
④の選考メソッドは、制限の少ない順にUnscreened、Zoned、Limited Unscreened、Screened Language、Talent Test(中学のみ)、Composite Score(中学のみ)、Educati
onal Option(高校のみ)、Screened(芸術系中学のオーデョション含む)、Audition(高校のみ)となり、これにSHSATテストのスコアのみで選考されるスペシャライズド高校がある。(表1)
 表からわかるように、抽選などの入学選考では、願書とともに提出される小・中時代の成績に関係なく生徒を選ぶ学校と重視する学校に分かれる。その提出される成績などのアカデミック情報が、中学進学(6年生)では4年生の、高校進学(9年生)では7年生時のものになる。日本の受験と最大の差といえるのがここだ。

入学2年前の学年の評価が進学に影響

ニューヨーク市公立中・高校願書提出締め切りは、5、8年生の12月初め。入学の10ヶ月前には最終的な志望校リストを決めねばならない。
 願書に記されるのは4、7年時の①最終リポートカード(成績表)、②州統一コモンコアテスト結果、③欠席、遅刻日数だ。加えて、中学進学では④4年生担任による学習態度の評価が記載される。

 テストスコアは、入学する1年半前の結果が合否を決める決定打にならないよう、選抜評価の際にスコアの評価が45%以上の比重を占めてはならないと決まっている。「スコアは判定材料としない」と宣言する中・高の進学校もある。しかし生徒側にとっては、合否を左右し得る要素であることには変わりはない。
 進学を左右するこれらの要素が5、8年生になる前に出揃うため、受験直前のラストスパートで一発逆転、希望校に合格ということが、叶わない。特に、州外からニューヨーク市の公立校に転入する家庭は、この独特なシステムに注意が必要だ。

 

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4、7年生の1年間、家庭でサポートできること

 長い学校生活の中、子どもは時にやる気がなくなったり、思春期、反抗期もあろう。誰にでも訪れる時期だが、ことニューヨークでは、なるべく4、7年生の1年はうまく乗り越えたい。
 これらの情報に関して保護者・生徒対象にワークショップを開催する学校もあれば、何もしない学校もある。学校選びのオプションを最大限に広げ、後になって「知らなかった」ということにならぬよう、4、7生時に抑えるべきポイントをいくつか紹介するする。

▪遅刻・欠席の管理

 無遅刻無欠席は理想だが、そうでなければだめだと短縮的に考える必要はない。志望先の学校により、0〜9回までは同等に評価する、0と1〜9回までを分けて評価する、さらに細かく段階的に評価するなど、一様ではないからだ。一般に遅刻欠席の合計が10回以上になると赤信号だ。長期療養は診断書を願書に添える必要がある。
 無断遅刻・欠席は避ける。 理由のある場合は、必ず書面で学校に提出する。 医師にかかった場合は、その日に診察したという証明書(ドクターノート)を必ず貰う。自宅療養でも保護者のメモを提出する。子どもに託すと忘れることもあるので、必ず専任スタッフの手に渡ったかを確認する。
 交通機関の利用や、入り口で警備員チェックのある学校では、自分のせいでなくても足止めされる場合もあるので、時間に余裕をもって登校させる。
 各学期の遅刻欠席数に間違いがないかを早めに確認する。一定期間を過ぎると、教育局側の訂正が不可能になり、誤った記録が残ってしまう。

 

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▪成績とエキストラクレジット

 宿題は期限を守り、忘れないように家庭で確認する。テストが満点でも、発言など授業への参加態度が成績に影響するのがアメリカだ。成績の落ちた教科は、具体的に何をすれば引き上げられるか、教師のアドバイスをもらう。
 エキストラクレジットの制度がある教科は成績をリカバリーするチャンスだ。子どもは余計なことはやりたがらないものだが、この時期だけは頑張らせよう。制度がなくても、教師に相談することは恥ではない。
 成績が不自然に下がった場合、先生の宿題紛失、入力間違えの有無を確認することも失礼にはあたらない。

▪テストスコア

 コモンコアテストについては、毎年賛否両論が起こるが、ニューヨーク市では進学の鍵であることは現実だ。学校によりテストに対しての温度差もある。学校側の指導態勢を早い段階で把握しよう。
 テスト問題はニューヨーク州のコモンコアサイトengageny.orgに詳しい。子どもの苦手な部分を把握して補えるよう、親が一緒に勉強する、塾や家庭教師などの専門家の力を借りる、子どもの不安を聞いてやるなど、学力、精神面の両方でサポートしていこう。
 年間通しての学習・生活態度が選抜の評価に繋がることで、気が抜けずストレスフルと言われるニューヨークの進学。事前に知っておくことで可能になる親のサポートは、後に大きな差になる。(文=河原その子)