地下鉄エレベーター新設を棚上げ
混雑課金中止で「アクセス改善」遠のく
MTAは20以上の地下鉄駅にエレベーターを新設する計画を棚上 げにする。 ニューヨーク州のホークル知事が混雑課金を中止したことによりイ ンフラ整備の財源のめどが立たなくなったためだ。23日、 ゴッサミストが報じた。
マンハッタン内7番街と53丁目の地下鉄駅で、マレーシア・ グッドソンさん(22) は1歳の娘を乗せたベビーカーを抱えて階段を降りていた。 エレベーターがなかったためだ。 3つある階段の最後のところで息が絶えた。 この惨事が起きたのは2019年1月で、 地下鉄駅にエレベーターの設置を求める声が高まった。
州議会で混雑課金が承認されたのはその年の4月。 MTAはそれを財源としてインフラ整備計画を立て、 52億ドルの予算で20〜 24年に72の地下鉄駅にエレベーターを設置する予定だった。 ところが今年6月ホークル氏が突然混雑課金に待ったをかけ、 MTA の計画も沙汰やみとなる。
グッドソンさんのいとこ、ドンタイシア・ターナーさんは「 エレベーターがあれば、死なずにすんだ」と憤り、 MTAの理事会に出席してエレベーター設置を中止しないよう詰め 寄った。ターナーさんは、グッドソンさんの娘を育てている。 7番街と53丁目の地下鉄駅ではマレーシアさんが「 いるような気配を感じる」という。
MTAは22年、障がいを持つアメリカ人法に基づく訴訟に和解。 その際、55年までに地下鉄駅の95% に車椅子用ランプ傾斜路またはエレベーターを設置すると合意した 。混雑課金中止でこの合意がどうなるかも不明。原告関係者は「 財源がないでは済まされない。知事や州議会に圧力をかけていく」 と話している。
MTAはコメントの求めに応じていない。ただ、 リーバー局長は先月「アクセス改善に影響が出たのは心が痛む」 と発言。「財源が確保でき次第、 エレベーター新設を実行できるよう準備を怠らないようにする」 と続けている。