小6のまな娘、白血病で失った経験を絵本に

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共同通信
亡くなった荒田歩佳さん(母由香さん提供)

 小学6年のまな娘を白血病で亡くした岐阜県高山市の女性が、好きな菓子作りを通し笑顔を取り戻した経験を絵本にする。制作費用を募るため、生きていたら娘が21歳の誕生日を迎えるはずだった6月25日を締め切り日としてクラウドファンディングを実施。大切な存在を亡くした人の悲嘆に寄り添う「グリーフケア」や、がんを患う子どもたちへの支援の輪を広げようと、小児がん啓発月間である9月の完成を目指す。(共同通信=村社菜々子)

 荒田由香さん(47)の娘歩佳さんは小学3年の時、急性リンパ性白血病を発症。約2年半にわたる治療を受けた。入院し、骨髄移植により一時は登校できるほどに回復したが、間もなく再発。2015年に12歳で亡くなった。

 由香さんは、集中治療室(ICU)で「お母さんはどこで寝るの」と心配し続けた歩佳さんの姿が忘れられず、現実が受け入れられなかった。どう生きていけばよいか分からず途方に暮れていたが、歩佳さんが亡くなった5年後、ふと思い立ち、好きだったシフォンケーキを焼いた。

 調理にのめり込み、22年に娘の名前にちなんで名付けたシフォンケーキ屋「思歩音」を開店。小児がんの治療研究への助成などを行うNPO法人「ゴールドリボン・ネットワーク」に店の売上金の一部を寄付している。

 菓子作りを通し生きがいを見つけた体験を描いた絵本のタイトルは「シフォンケーキのしふぉんくん―ずっとそばにいるよ」。あとがきでは、小児がんの子どもたちを支援していきたいとの思いや、シフォンケーキ作りによって少しずつ自分の気持ちが安定し、グリーフケアにつながったことなどがつづられている。

 今年5月から開始したクラウドファンディングでは目標額の100万円の2倍超に当たる230万8千円が集まった。用意する絵本の巻末には、成長した歩佳さんが弟と一緒に笑顔でシフォンケーキを食べる姿が描かれている。

 由香さんは「娘や私の人生を描いた絵本を残すことが、誰かの支援につながったらありがたい」と話した。

シフォンケーキを作る荒田由香さん=2024年7月2日、岐阜県高山市