この記事の初出は2024年8月13日
「白人57.8%」対「非白人42.2%」という構図
2020年の国勢調査の結果をもう少し詳しく見てみよう。
前記したように、アメリカの総人口に占める人種・民族グループの構成は、「白人」(White alone)の割合が57.8%と最大だが、続くのが「ヒスパニック系またはラテン系」(Hispanic or Latino)で18.7%、3番目が「黒人またはアフリカ系アメリカ人」(Black or African American alone)で12.1%である。
これに続いて「アジア系」(Asian alone)が5.9%、「アメリカ原住民」(American Indian and Alaska Native alone)が0.7%、「ハワイ系または他の太平洋島嶼系」(Hawaiian and Other Pacific Islander alone)が0.2%、「そのほか」(Other Race alone)が0.5%、「2人種かそれ以上の混血」(Population of two or more races)が4.1%となっている。
以上を単純にまとめると、「白人57.8%」対「非白人42.2%」となる。つまり、アメリカでは人種・民族の多様化が進んでいるということになり、いずれ、白人もほかのマイノリティと同じとなって、過半数を占めるマジョリティがいなくなる。
「DI」が示すアメリカの民族・人種の多様化
国勢調査で注目されるのが、「ダイバーシティー指数」(Diversity Index:DI)である。DIは、無作為に選出された2名が異なる人種および民族である確率を示す0から1まで数値で表すものだ。
0の場合は、母集団の全員が同じ人種および民族的特徴を持っていることを意味する。1に近い場合は、母集団のほぼ全員が異なる人種的・民族的特徴を持っていることを示す。ただし、DIの数値は、解釈しやすくするためにパーセンテージに変換して表記される。
アメリカ全体のDIは、2010年が54.9%で、2020年は61.1%に上昇している。つまり、多様化が進んでいる。
以下、州別にDIを示してみるが、これを見れば、どの州が人種・民族的な多様化が進んでいるかがわかる。
DIが1位なのはハワイで、2010年75.1%→2020年76.0%。次がカリフォルニアで2010年67.7%→2020年69.7%、3位がネバダで2010年62.5%→ 2020年68.8%である。
以下、4位以下10位までを示すと、次のようになっている。
4、メリーランド(60.7%→67.3%)、5、コロンビア特別区(61.9%→67.2%)、6、テキサス(63.8%→67.0%)、7、ニュージャージー(59.4%→65.8%)、8、ニューヨーク(60.2%→65.8%)、9、ジョージア(58.8%→64.1%)、10、フロリダ(59.1%→64.1%)
白人がマイノリティになったらどうなるのか?
次の2030年の国勢調査で、人種構成がどのように変化しているかは、出生率、移民などのファクターが不明なのではっきりとはわからない。しかし、多くの研究機関の調査によると、2040年ごろにまでには、白人の割合が5割を切ると予測されている。
そうなると、これまでマイノリティとされたヒスパニックや黒人などの非白人がマジョリティになる。といっても、どの民族・人種も単一ではマジョリティになれないので、アメリカは完全な多様化社会になる。
これが人類社会の未来のユートピアなのか。それとも、ディストピアなのかはわからない。少なくともトランプは、そうした社会になることを阻止しようと、移民敵視政策を掲げている。しかし、それは、異なる民族・人種が互いにいがみ合う殺伐とした未来だ。
『WHITESHIFT 白人がマイノリティになる日』(エリック・カウフマン著、2023)という本がある。この本の中で、著者は、白人が減少する一方で、白人の伝統的な文化を身につけた混血人種が新たなマジョリティを構成する未来を提唱し、それを「ホワイトシフト」と名付けている。
しかし、そんな白人にとって都合がいいことが起こるのだろうか?(つづく)
この続きは9月9日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。