楽譜なし「耳コピ」演奏する岐阜の女子中学生

Published by
共同通信
高齢者施設でピアノを演奏する熊沢結南さん=2024年8月7日、岐阜市

岐阜県を中心に高齢者施設や病院でピアノの演奏ボランティアをする中学1年生がいる。耳にした曲を楽譜なしで再現する「耳コピ」ができる岐阜市の熊沢結南さん(13)だ。曲目は童謡や歌謡曲、アニメソングとさまざま。演奏を聴いた人たちは「心に響いた」と笑みを浮かべる。(共同通信=福岡未歩子)

 2024年8月、同市の高齢者施設で熊沢さんの演奏会が開かれた。映画「サウンド・オブ・ミュージック」の曲や演歌「津軽海峡・冬景色」が流れると、高齢者らは手をたたいたり口ずさんだりしながら聴いた。参加していた子どものリクエストに応え、映画「となりのトトロ」の「さんぽ」も即興で弾いた。

 手元に楽譜はなく、耳にしたことのある曲にアレンジを加えて再現。この日、披露した荒木とよひささん作詞・作曲の「四季の歌」は、祖父の車で流れていたのを覚えた。演奏を聴いた70代女性は「何でも弾けて天才。言葉では表せない、感じるものがある」と感心した様子だった。

 熊沢さんは3歳のとき電子ピアノに触れ、いきなり童謡を再現して家族を驚かせた。幼稚園で覚えた曲をまねして家で弾くように。5歳からピアノ教室に通い、クラシックコンクールの全国大会で入賞したこともある。

 小学校低学年のころから市内の飲食店で演奏。その後、弟が入院していた病院の待合室で見た患者や家族の表情が暗いと感じ「ピアノで少しでも気が紛れ、明るくなれたら」と、母藤子さん(49)に相談し、病院や高齢者施設の訪問を始めた。

 病院のコンサートで披露した山口百恵さんのヒット曲「いい日旅立ち」を聴いた高齢の男性患者が「若い頃に北海道から上京した思い出がよみがえった。胸に響く演奏だった」と涙を流し、お礼を言われたことが心に残っている。

 今後、活動を全国に広げていきたいと考えている。「ありがとうと言ってもらったり、喜んでもらえたりするとうれしい」とはにかんだ。

高齢者施設で熊沢結南さん(左端)のピアノを聴く利用者ら=2024年8月7日、岐阜市