羊肉ホロホロ、アフガンの茶瓶料理「チャイナキ」

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共同通信
石窯の上に並んだ茶瓶でチャイナキを調理する2代目店主のワヒドさん(右)ら=2024年8月、アフガニスタンのカブール(共同)

 アフガニスタンの首都カブールの旧市街。人がすれ違うのもやっとの細い路地が入り組む。一角にある狭い階段を上がると、郷土料理「チャイナキ」の老舗ワヒド・レストランがある。小さな茶瓶チャイナックに羊肉や秘伝のスパイスを詰め、まきが燃える石窯の上で約4時間、じっくり煮込む。肉は臭みが消え、パンで包んで取ると崩れるほどホロホロだ。(共同通信カブール支局)

 店主のワヒドさん(45)は2代目。チャイナキは70年の歴史があるとされ、店は父が40年以上前に開いた。ワヒドさんは18歳で修業を始め父が死んだ18年前に店を継いだ。

 茶瓶1個が1人分。羊肉とひよこ豆、羊の尻の脂、スパイスを押し込む。100個ほどの茶瓶が窯の上に並ぶ。注文が入ると「カチャカチャ」と音を立てながら次々にふたを開け、出来上がった茶瓶から提供していく。

 毎日午前3時に仕込みを始め、閉店の午後2時には250食を完売する。翌日の仕込みをし、午後11時ごろに1日が終わる。「父の味」はスパイスに隠されており「調合方法は絶対に秘密」だ。

 男性客は一段高い台に靴を脱いで上がり、あぐらをかいて相席で座る。ほぼ満席で次から次に客が入れ替わる。女性客は店の奥のカーテンで仕切られた席に案内される。

 周辺の路地にはアフガン伝統の平焼きパン屋や敷物店がひしめき合い、小鳥やウサギなどの小動物を売る店が続く区画もある。人いきれとさまざまなにおいが混ざり合い、各店のテントやトタン屋根が張り出した隙間から太陽光が差し込む。まるで、ひと昔前にタイムスリップしたようだ。

 ロンドン在住30年のカリム・ナイムさん(63)は2年ぶりの里帰りに合わせ、家族と親戚計20人で初めて訪れた。ソーシャルメディアで動画を見たという。「期待通り、特別な味」と満面の笑みを浮かべながら頬張った。

石窯の上に並んだ茶瓶でチャイナキを調理する2代目店主のワヒドさん=2024年8月、アフガニスタンのカブール(共同)
ロンドンから2年ぶりの里帰りで念願のチャイナキを食べるナイムさん(右端)=2024年8月、アフガニスタンのカブール(共同)
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