飯島真由美 弁護士 Legal Cafe Vol.31 日米間での契約の違いについて

 最近話題になった、東芝のウェスティングハウス・エレクトリック(WH)買収時の契約など、日本企業が不利な条件で契約をする事例が報道されています。大企業同士の契約に、なぜそのようなことが起こるのでしょうか?日本企業は「だまされて」いるのでしょうか。

日本の契約と米国の契約方法の違い
 日本では契約書相互間の信頼が大切とされ、大掛かりな契約であってもごく簡単な書面の場合が多いです。また、契約書の中に「契約書に定めのない事項または契約書に問題が生じた場合は、甲乙の協議により解決する」といった事項が含まれ、契約書自体の内容よりも相互の同意が重要となります。
 これに対し、米国の契約書には全ての条項が盛り込まれることが原則で、そのため条項を明確にするために、言葉の定義に多くのページが割かれることが多くあります。契約書にない口約束は、基本的に無効であり、条件が変更されるときは契約書の再作成をすることになっています。また、紛争時にはお互いの協議ではなく、指定の管轄の裁判所にて紛争解決をすると定義されています(最近はコストや時間の削減のため、調停や仲裁による解決方法を定める契約書もあります)。

交渉方法
 長期間一緒に働くパートナーではなく、初めての契約交渉の場合、まずは自社に有利な条件を出してくる米国企業は多いかと思います。それは、米国企業が「傲慢である」というよりも、まずは条件を投げてみて相手の様子を伺う場合が多いからです。相手が条件に反対してきたり、またはカウンターオファーを出してくることは想定内であり、通常はそこから交渉することを前提としています。既に同意があることから始める日本企業の場合、難しい状況かもしれません。また、他に米国の交渉人はほぼ全決定権がある事に対し、日本企業の交渉人は本社に確認をする必要があるため、それによるタイムラグで不利な交渉となることもあるようです。

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飯島真由美 弁護士事務所
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NY州認定弁護士。法政大学文学部、NY市立大学ロースクール卒業。みずほ銀行コンプライアンス部門を経て独立。2010年に飯島真由美弁護士事務所を設立。家庭法、訴訟法、移民法など幅広い分野で活躍中。趣味はカフェ巡り。