「世界に飛び立て子どもたち 自分たちで造った Jet でね それまでは、僕たちの造った Jet でもいいよ」
HondaJet 開発責任者、藤野道格さんが進路講演会 NY日本人学校
HondaJet の開発責任者を務めた藤野道格さんが10月31日、ニューヨーク日本人学校(コネティカット州グリニッチ、岡田雅彦校長)を訪問。同校初等部および中等部の児童·生徒40人に「空への挑戦~ HondaJet 開発物語」とのテーマで進路講演会を行った。
HondaJet は、航空業界の鉄則を打ち破り、主翼の上にエンジンを置いた革新的デザインの小型ビジネスジェット。エンジンの位置により、性能と燃費効率が大きく向上したと同時に静かさや客室の広さなども改善、さらにソフトウエアを駆使することで、操作の快適性も実現した。新規参入にも関わらず2015年12月の販売開始以来、当該クラスで最も人気の高い機種の1つとしての地位を確立している。
藤野さんは、1984年東京大学工学部航空学科(現在の航空宇宙工学科の前身)を卒業。「日本が世界で主導権を握りながら事業ができるのは自動車産業しかない」と、本田技研(ホンダ)に入社。1986年、同社が航空機研究チームを立ち上げると同チームに配属となり、2カ月後にはミシシッピー州に転勤。2022年4月、ホンダエアクラフトカンパニーの社長兼CEOおよび本田技研工業常務執行役員を退任するまで36年余りにわたり一貫して同社の HondaJet プロジェクトを牽引した。
講演で藤野さんは、山あり谷ありの自身のキャリアを通じて、「信念をもって、やり続けることの重要さ」「常識を疑うことの重要さ。ただしそのためには『基礎』をしっかりと固めることがまず重要」「(最終的に製品を使ってくれる)顧客に、自分自身で直接触れることの重要さ」などを親しみやすい言葉で語りかけた。最後は「航空機開発は新規参入が非常に難しい産業分野であるだけに、極めてやりがいがある。成功するためには、多様な才能や文化背景を持つ多国籍チームメンバーと力を合わせて事業化を実現していくことが重要。僕の場合は、26歳で初めてアメリカに来たが、皆さんは僕よりも10歳以上も若く、アメリカで活躍する機会を得ている。ぜひともそのメリットを活かした活躍を期待している」とエールを送った。
生徒たちからは、「あきらめずに努力すれば夢も叶うことが分かった。僕も何かを発見して、頑張ってみんなに知られるようなことをしたい。また藤野さんが、『ビジネスジェットは一般の人でも頑張れば乗れる』と言っていたので、僕も将来、何か会社を作って乗ってみたい(6年生)」「藤野さんの結果は良いものだったが、その背景には実ることがなかった努力があったんだと思う。よほどの才能がない限り、人が成功して多大な名声を得ることは不可能だと思っていたが、少し違うことが分かった。成功する人に必要なものは、強い精神力だと思う(9年生)」などの感想が聞かれた。 (取材・文/武田秀俊、写真も)