この記事の初出は2024年11月26日
「政治とカネ」が最大の焦点だったはずが、いつの間にか「年収103万円の壁」にすり替わり、国民民主が自公と合意して、年末の臨時国会が始まることになった。
この国会で決まるのは、非課税世帯に給付金3万円などが柱の補正予算。相も変わらずの「バラマキ」だ。石破内閣に少しは期待したが、これではなにも変わらない。
これ以上「バラマキ政治」を続ければ、日本の衰退は止まらず、経済は破綻してしまうだろう。本当に、いい加減にしてもらえないだろうか。
「103万円の壁」は議論するだけの子ども騙し
もう改めて書く気も起こらないほど、日本の政治にはなにも期待できなくなった。国民民主の連立入りもひどいが、それで決まる補正予算もひどい。ひどすぎる。
これだけ、国民無視のデタラメ政治が横行しては、もはやこの国に未来はない。 自民、公明、国民民主の3党の政調会長は、11月20日に与党の総合経済対策案に合意した。国民民主が求める「103万円の壁」の見直しは、「2025年度税制改正のなかで議論し引き上げる」と明記すること。ガソリン減税に関しは、「暫定税率の廃止を含め、自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る」ことと、これもまた明記することで一致した。
これをメディアは歓迎報道したが、なにが歓迎できるというのだろうか。決めたのは「議論する、検討する」ということだけで、決まったわけではない。しかも、「103万円の壁」を巡っては、国民民主の178万円にまで引き上げる案は間違いなく減額される。永田町情報によれば、いくらにするか落とし所を決めるだけだという。
すでに、178万円まで非課税枠を引き上げたら、国と地方の税収が約7.6兆円減ると、財務省も全国の知事も「無理筋」と言っているのだから、こうなるのは間違いない。
財源問題は与党に丸投げという無責任ぶり
元グラドルとの不倫問題が発覚して、「ある意味、恥を忍んでいま代表を務めている」と言った玉木雄一郎の腰砕けぶりもひどいが、国民民主の古川元久税制調査会長の無責任ぶりもひどい。なんと「財源をどうするかは政府・与党側の責任だ」と言い放ったのだ。
これでは政策立案とは言えず、ただの果実取りに行っただけである。さらに、「(国からの)交付税で基本的に補填される制度になっている」と述べたのには、呆れた。これでもし最終的に赤字国債での対応となれば、結局、負担させられるのは国民だからだ。
さらにひどいのは、「103万円の壁」に世間の耳目が集まるなか、最大の課題「政治とカネ」改革も骨抜きになることだ。
本丸の「企業・団体献金」の禁止はスルー
自民党は再度「政治資金規正法」を改正するなどして「政治とカネ」改革をするとしているが、決まるのは党から議員に支給される「政策活動費」の廃止だけだ。
これは先の国会で、「領収書を10年後に公開する」ことでお茶を濁し、「抜け穴だらけのザル法だ」とされたため、仕方なくやることになった。
しかし、歳費(給与)とは別に国会議員に毎月100万円支給されている「調査研究広報滞在費」(旧文書通信交通滞在費)は温存される模様だ。「使途などについて規制し、チェックする第三者機関を設ける」としているだけで、廃止にはならない。
なぜなら、調査研究広報滞在費は、なにに使おうと公開義務がない「第2の財布」だからだ。
もちろん、「政治とカネ」の本丸は、主要野党が求めてきた「企業・団体献金」の禁止である。こちらは、与野党7党が参加し、公開のかたちで協議することには合意したが、紛糾するのは確実。自民党は、党の資金基盤であるだけに、絶対に譲らないはずだ。
つまり、いつまでたっても議論が続くだけで、決まるのの些細なことだけ。これまでの「裏ガネ政治」は続いていく。(つづく)
この続きは12月17日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。