最近のウォシュレットの進化はすごい
TOTOによると、日本での温水洗浄便座の普及率は年々上昇し、2015年3月末現在の一般家庭への普及率は77.5%に達するという。日本では、トイレがウォシュレットでない家のほうが少ないのだ。
しかも、ウォシュレットはどんどん進化している。最近のウォシュレットは、スマホ1台で操作ができるし、トイレに入っただけで自動的に照明が点き、便座のカバーが開いてスタンバイOKとなる。そして用を足した後は、ノズルが自動的に除菌水で除菌され、便器内も除菌水の噴霧によって清潔に保たれる。また、臭いも脱臭機能によって除去される。こんなトイレを毎日使っていれば、これがないと生活できなくなると言っても過言でない。
それなのに、なぜ、ニューヨーク(アメリカ)ではウォシュレットが普及していないのだろうか?
トイレ文化が伝統的に日本とは異なる
じつは、アメリカ人にとって公衆トイレは、イコール「汚い」という感覚が染み付いていて、それがたとえウォシュレットであっても抵抗があるという。
実際、私の家内と娘も、「ウォシュレットは一見清潔だけれども、ノズルなどは汚いと思う。前の人がこれで洗ったと思うと、使う気にならない」と言う。実際、TOTO USAでは、販売に苦戦してきた。TOTO USAの前社長・野方大二郎氏は、かつて「よみタイム」のインタビュー記事で、次のように述べている。
「弊社自慢のショールームのトイレでさえ、お客様に実際に『使ってみてください』と声をかけても『わかった』とは言うんですけど、実際はなかなか使って頂けないのです(笑)」
また、アメリカでは便器を買い求める人のほとんどが専属のプラマーを持っていて、水周りのことは全部業者にまかせているという。したがって、プラマーが必要性を認めないとウォシュレットは家庭に普及しない。
アメリカの家庭に行って思うのは、トイレ文化が伝統的に日本とは異なるということだ。日本の家屋では、トイレは単独でほかの部屋とは別個に存在している。しかし、欧米の家屋では、バスルーム、シャワールームと一緒に同じ部屋の中にある。
このような点も、ウォシュレットが普及しない原因ではないかと思う。
(つづく)
【山田順 】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。
この続きは、12月19日発行の本紙(アプリとウェブサイト)に掲載します。
※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。