IEPと504プラン 連邦法が定める公教育での病気や障害をもつ子どものサポート(3)

 
 前2回(2017年12月号、18年2月号)で、スペシャルエデュケーション(特別支援教育)におけるIEP(Individual Education Program)と、それ以外の生徒への504プランについて法的な枠組みを説明した。今回は504プランで実際に受けることのできる学習面の支援を中心に説明する。前2回(2017年12月号、18年2月号)で、スペシャルエデュケーション(特別支援教育)におけるIEP(Individual Education Program)と、それ以外の生徒への504プランについて法的な枠組みを説明した。今回は504プランで実際に受けることのできる学習面の支援を中心に説明する。前2回(2017年12月号、18年2月号)で、スペシャルエデュケーション(特別支援教育)におけるIEP(Individual Education Program)と、それ以外の生徒への504プランについて法的な枠組みを説明した。今回は504プランで実際に受けることのできる学習面の支援を中心に説明する。

504プランの対象になる生徒

 スペシャルエデュケーションに認定されるためには、特定の診断名があり、さらに査定によって認められる必要がある。しかし、ADHD(注意欠陥・多動性障害)など対象となる診断名を持ちながら軽度でスペシャルエデュケーションに認定されない場合もある。また、特定の診断名がなくても学習面で困難のある生徒もおり、彼らは一般生徒(General Education)として通常のクラスに在籍する。504プランは、このような生徒が他の生徒と平等な条件の下に公的教育を受けるための手段で、必要とされる分野でスペシャルエデュケーションと同等の支援を受けることができる。
 504プランはすべての公教育で適応されるが、具体的な支援内容、実施方法、申請フォームは各教育自治体により異なるので、詳細は各学校または教育局、スクールディストリクトの504コーディネーターに確認すること。

Parent504wHIPAA20172018-01_2

504プランの内容

 504プランは、健康管理に関するヘルス/メディカルアコモデーションと、学業に関するエデュケーショナルアコモデーションに分けられる。後者について以下の2点が大きな柱となる。
■授業中の配慮(Classroom / Curriculum Accommodation)
 席順の配慮、補助的テクノロジー機器の使用、宿題提出期限の延長など。集中力に問題がある場合は、授業中に短時間の中座が認められることもある。必要に応じた柔軟な対応も可能。

■テストにおける配慮(Testing Accommodation)
○テスト環境の配慮
 テスト時の席の配慮。少人数、もしくは個人で、別室で受ける。加配をつけるなど。
○テスト時間の配慮(Extended Time)
 テスト時間の延長が必要で妥当と認められた生徒は、40分以上のフルタイムで実施される各学科の学内テストと、全ての統一テスト(Standardized Tests)である州統一テスト(コモンコアテスト)、ニューヨーク市スペシャライズド高校受験のSHSAT、リージェントテスト、SAT、ACT などで通常の1.5倍から2倍の時間延長を許される。これは芸術系のオーディションでも適用される。

 生徒は別室に集められるので、他の生徒の終了時間に惑わされずに自分のペースでテストを受けることができる。規定時間が3時間以上のテストでの延長では途中休憩も可能になる。

▽テスト時間延長の注意点
*生徒の身体的・精神的な症状に対して与えられる配慮で、学力の優劣とは関係ない。有名進学校でも常に一定数、テストアコモデーションを持つ生徒はいる。
*テスト結果は規定時間でのテスト結果と同等に扱われる。SHSAT、SAT、ACTなども時間延長を使用したかどうかは知らされない。時間延長で成績や進学に不利になることはない。
*時間延長を認められても、生徒により適合しないこともある。時間延長で飽きる、集中力が落ちる、体力が持たないなど不利に働く場合もある。
*延長時間を認められても、生徒の意思が優先する。友達と一緒でないことを嫌がる、恥ずかしく思う、面倒に思うなど、生徒がテスト現場で拒否した場合は、教師でも強制的に時間延長で受けさせることはできない。

Closeup of hand holding pen and filling out questionary form on table

Closeup of hand holding pen and filling out questionary form on table

支援の知識を持つ

 504プランは、保護者が子どもに問題を感じている場合、学校との話し合いの中で保護者がその存在を知るケースが多い。もともと診断がついていながら、スペシャルエデュケーションを却下された場合は、そのまま504プランを紹介されることがある。だが、障害を疑っていない、または診断されない場合では、504プランを知らないまま、本来子どもが得られる支援とそれによって得られる効果を見逃すこともあるかもしれない。504プランの存在を知ることで、子どもの抱えるつらさや困難を軽減する助けになる可能性もある。
 子どもが学校へ行きたがらない、テストや授業に集中できずに担任に繰り返し指摘される、宿題を嫌がり、完成までに時間がかかる、問題行動がある、整理整頓や時間管理ができないなど、保護者からみて、「怠けている」「サボっている」「根気がない」「勉強嫌い」としか思えないことは多々あるだろう。長年言い聞かせたり叱ったりしても解決できない、または悪化する背景には、マイルドな発達障害やグレーゾーン(正常と発達障害のボーダーライン)、うつ、不安神経症などの問題が隠れているかもしれないのだ。

 504プランには、学外のカウンセラーや医師などの専門家の助言や診断が必要になる。家庭で抱え込まずに、積極的に学校や専門家へ相談することは障害のラベル付けではなく、子どもの可能性を開く道になる。
(文・河原その子)