ファッションライターあやこんぶの“おしゃクロ!” Vol.44  METで見る、神々しいファッションの世界 Heavenly Bodies: Fashion and the Catholic Imagination

© The Metropolitan Museum of Art

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 メトロポリタン美術館で行われている特別展示、「Heavenly Bodies: Fashion and the Catholic Imagination」は、一流ブランドによるうっとりしてしまうほど美しいドレス作品が一挙に見られる、とにかく豪華な企画。

そこには、ローマ・カトリック教会にみる偶像崇拝やその背景にある宗教観をファッションという枠で見直すような、タブー視されがちなデリケートなテーマに挑んだキュレーションの巧みさが見て取れます。
 

© The Metropolitan Museum of Art

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 何世紀にもわたり受け継がれてきた厳かなカトリック教会の伝統美が、歴史と伝統あるメトロポリタン美術館内で輝きを放っています。古代美術が並ぶ大ホールをキャットウォークするかのように配置されたマネキンたちがまとっているのは、イブ・サンローラン、バレンチノ、ベルサーチ、ジバンシィを始めとする一流ブランドのまぶしいほど装飾的なドレス。女王のような出で立ちで大ホールを歩くように列をなし、ファッションショーを模しています。ドレスはアナ・ウィンター・コスチューム・センターの協力の下、トップデザイナーたちによる十字架や天使などのカトリック的モチーフにインスパイアされた作品が集められ、また実際にバチカン市国外に出されたことのない真の聖職者の装いも混ざっています。ホール脇には透き通った天使のようなドレス、回廊には修道女風ドレス。トム・ブラウン、リック・オーウェン、日本勢ではアンダーカバーなどによるエッジの効いたデザイン、左右非対象で前衛的な作品も並びます。アバンギャルドで真っ赤なショートヘアのマネキンを使って意表を突く、そのヒネリにも脱帽です。
 

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 5番街の本館とワシントンハイツにある別館クロイスターズの両方で10月8日まで同時開催中。大聖堂にいるかのような荘厳な本館の展示も素晴らしいですが、修道院建築の回廊に並ぶ別館の展示もまた違った神秘的な美が生きています。3月から入館料が有料になったばかりですが、ニューヨーク居住者はまだ任意の価格で入館できるので、スケールの大きなアートを見られるこの機会をお見逃しなく!

 
 
 

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フリー・ジャーナリスト
Aya Komboo
日本では数々の出版社で経験を積み、フリーランスへ転身。2006年よりロサンゼルスへ渡米し、現在はニューヨークを拠点にファッション/カルチャー誌などで活躍している。
www.ayakomboo.com